スノードーム

□第4話
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ー医学部の棟の花壇で絵を描いている

花城さんにそう言われ、僕は後日その場を訪れた。


その場所は棟の裏側の方にあって、こんな場所があることを初めて知った。
そう広くはないスペースだけど、そこに植えられた花達は冬だというのに健気に咲いていた。

そんな花壇がちょうど良く見える階段にうずくまる女性の姿が見える。


「花城先輩。」

その姿に優しく声をかけると、はたと女性が顔をあげた。

彼女は目を丸くすると、柔らかく笑う。

「不二くん…来てくれたんだね。」

彼女の側に近寄ってみると、花城さんの膝にスケッチブックが横にはジョウロがあった。

僕は少し迷ってジョウロを指差す。

「ここの花壇、いつも先輩が水をやっているんですか?」

「うん。管理してくれてる人はいるんだろうけど、こうしてると私もお世話したくなっちゃって。」

「なるほど、花壇の絵を描いているんですね。」

僕がスケッチブックに目をおとすと、彼女はそれを持ち上げて隠すように口元へ持っていった。

「ふふ、なんだか恥ずかしいな。」

そんな彼女の横にクレヨンを見つける。

「これ…久しぶりに見ました。」

僕がそのクレヨンを拾うと、彼女はゆっくりとスケッチブックを降ろしてその絵を露わにした。

そこに描かれていたのは、クレヨンの花だった。
その花は淡く何層も色を重ねられていて、クレヨンにはこんな使い方もあるのかと思わず釘付けになる。

「私、クレヨンが好きなんだ。子供が使うものって思われがちだけど、柔らかくて優しいから描きやすいの。」

そう言われ、子供頃はこれを使って力いっぱいに伸び伸びと絵を描いていたなと思った。

「そうですね、だから子供頃はあんなに夢中になって使っていたんでしょうね。」

「うん、どんな人でも親しみやすいように作られてるんだと思うなぁ。」

「その絵、もっとよく見せてもらってもいいですか?」

僕が彼女にクレヨンを手渡すと、彼女はいいよ、とスケッチブックを僕に渡してくれる。

手にとって間近でその絵を眺めると、それは懐かしさと優しさを呼び起こして、安心感を与えてくれる不思議な絵だった。
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