ありいの短編集

□ダメだって
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「ねぇ…お前てバカなの?」




あまりに冷えきった声に、顔もあげられない。


番組の収録が終わって楽屋に戻ると、仁王立ちのだいちゃんが、鬼の形相で俺を待っていた。


だいちゃんが怒ってる理由は、ちゃんと分かってる。


怖い…


楽屋にはだいちゃんと俺の二人だけ…


助けてくれるメンバーはいない。




「だって、仕事だもん。そんな怒んなくていいじゃん」




声が震えてたと思う。


“…さんとのキスが忘れられない“そう言ったのも俺だけど


番組の流れで、そうなってしまったのも仕方のないことだと思う。




「…っ…けど…俺は嫌だよ」




そう言っただいちゃんは、先まで怖い顔して怒ってたはずなのに…


大粒の涙を流して、泣いていた。




「伊野尾ちゃんのキスは…そんなに安ほっいの…っ…」




今…


だいちゃんを悲しませてるのは俺…。


ズキン、ズキンて、胸が張り裂けそうに痛くなる。




「いくら仕事だからて…見せ物みたいに…誰とでも…キスなんて…して欲しくなかった…っ!!」




番組の企画だからて、軽い気持ちで考えてた。


だいちゃんが心をを痛めることなんて、微塵も思いつかなかったんだ。


言われて気づくなんて…


俺は救いようのないバカだ………。




「だいちゃん…」




触れる手が避けるように空を切る。


今までどんなことがあっても、拒絶されたことなんてなかった。


ことの重大さに気づいて、涙が零れ落ちる。




「触んないで…」




無機質で感情の籠もってない声。




涙で視界が見えない…




だいちゃんは優しい人だから、許してくれる。


そう思っていたのは、俺の間違いだったようだ。


こんな状況で、やっと気づくなんて。


俺はそれをいいことに、だいちゃんの優しさにずっと甘えてた。




「さよなら…伊野尾ちゃん…」




パタンと閉まる楽屋のドア。


最後に残した言葉の意味は、きっと別れを意味するものだろう。


俺はすがりつくことも出来ずに、だいちゃんのいなくなった部屋で


声を押し殺して、


ただ…ただ…泣いていた。





きのこ的な心の叫びです笑 だから、続きは書きません
 

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