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□どうして好きになったんだろう
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いくら考えても、光の気持ちが分からなかった。


恋人同士になった今でも光の態度は以前と変わらなくって、


不安ばかりが募って、付き合ってるて実感なんて沸いてこない。






夜の街を彷徨い続けて、一軒のバーに辿り着く。


欲しいのは快楽を与えてくれる男だけだったから、此処に来ればいくらでも相手には不自由しなかった。


光と付き合い始めてからは、一度も顔を見せてないけど・・


この店のマスターとも顔見知りで遠慮するような仲じゃなかった。


「久しぶりだね、マスター。俺に会えなくて寂しくなかった?」


カウンターの席にゆっくりと腰をかける。


「彼氏に可愛がって貰ってないの?
伊野尾くんが此処に来るのは、たいてい落ちてる時だよね笑」

「ふふ、よく分かってるね…」


光がノンケじゃなかったら、こんなにも悩まなかったかもしれない。


「どうして好きになちゃたのかな…」


カランと酒の入ったグラスが揺れて、ポツリと呟き、煽るようにそれを一気に飲みほした。


「喧嘩でもしたの?彼氏さんと?」

「さぁ……でもさ…。
俺達付き合ってるのに、今だにエッチどころかキスさえもしてないんだよ」

「押し倒しちゃえばいいのに」

「簡単に言わないでよ…」


もし俺が触れたら光は、気持ち悪いと思うのだろうか。


あいつは女しか知らないから、


自分から踏み出すなんて、臆病者の俺にはできない。


寂しくて、好き過ぎて、胸が痛いと悲鳴をあげてる。


こんな時は誰でもいいから、


縋りたかった………





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