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□ネコになりたいの
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「俺、高木雄也。キミは?」
「伊野尾慧…。いのちゃんて呼ばれてます」
「じゃあ、いのちゃんね。俺のことは雄也でいいから」
話してみれば気さくな人で、
趣味も合うし、ファション関係の仕事をしてるらしい。
「いのちゃんてセンスあるよ、今度俺にコーディネートしてあげるね」
「うわ〜マジで嬉しいっ!楽しみだなあ〜でも俺なんかがいいんですか?」
「ダメだよ。いのちゃん〜」
「ふんがっ…」
不意に伸ばされた手は俺の鼻先を摘まんで、ニッコリと微笑む高木さんにドキドキと心臓が高鳴る。
ふにゃりとした優しい笑顔に、見惚れてしまう…
「敬語はやめて、俺はいのちゃんと親密な関係になりたいから」
見た目どうりのチャラ男だな…
でも、全然イヤな感じがしない。
俺の心臓…ドキドキが止まらないし…
それに…
やけにスキンシップが激しいと思うのは、気のせいじゃないはず…
「あの…雄也…手が…」
「なに、どうしたの?」
分かってるくせに、
太腿辺りに置かれている手は、結構際どいとこまで触られてる。
「おっと…手が滑った…」
「ひっ…」
わざとらしく言いながら、雄也さんの手は完全に俺のイチモツを握りしめていた。
絶対にわざとですよね、紛れもなく確信犯ですよね!?
「いいもん持ってんじゃん…」
俺にしか聞こえないような声で、雄也さんが囁く。
やっ…ヤバいて!!
「ほんと、いのちゃんて格好良いよね…」
「雄也のほうが…」
「俺がなに?」
「雄也が…俺なんかより数倍格好良い…」
「嬉しいこと言ってくれるね」
マスターに視線を送るも、ニヤニヤするばかりで知らんぷりだ。
酔っ払ってるのか、雄也は俺に寄りかかってくる。
確かに雄也は格好良いけど、
俺は決して軽い男じゃ………
「ふたりきりに…なれるとこ行こうか…」
「…はい」
簡単すぎるだろ俺…
だって、だって、
雄也てイケメンだし!気さくでフレンドリーだし!
それに俺に向けられる眼差しが、
超…優しいんだもん。
マスターは俺と視線が絡むと、シャキーンと親指を立てた。
いったい、なんなの…?
失恋したばかりなのに、俺は誰にでも着いていく軽い男だったんだろうか…
そんなんじゃない。
俺は雄也に、恋がしたかったからだ。
ねぇ…
雄也のこと……
"好きになっても、いいですか?"
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