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□ネコになりたいの
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「なあ、俺んち来ない?」
耳許で囁かれただけで、腰砕けそうにでもなりそうな甘いボイス。
「いいの…?お邪魔しちゃても…」
「勿論だよ…いのちゃんのこと…もっと知りたいし…」
腰を抱き寄せられて、ドキンと心臓が飛び跳ねる。
それに…
キスできそうなくらいの至近距離だ。
どうすんだよ…
こんなにドキドキさせて………
「着いたよ」
辿り着いたら、びっくりするような高級マンションで。
ファッション関係の仕事してるて言ってたけど、そんなに儲かってんのかな…
塵ひとつない綺麗な部屋。
一瞬でも、チャラそうな男だと思ったことが申し訳ない。
「その辺に座ってて、何か軽いもの作ってやるよ」
「えっ…いいの?」
「バーカ、遠慮すんなって。俺が慧の為に何かしてあげたいの!」
どうして、この人は恥ずかしくなるようなことを平気で言えるんだろう。
てか、
呼び方が、いのちゃんから慧に変わってるし…
頬が熱い…
これは、きっと酔ってるせいなんかじゃない………
ピンクのフリルのついたエプロンが、やけに乙女チック。
キッチンからは鼻歌までが聞こえてきて、なんだか楽しそうだな…
「おまたせ〜」
テーブルのうえに並べられた料理は、どれも美味しそうだ。
グラスに注がれた、如何にも高級そうなワイン。
「ありがとう…ございます…」
「どういたしまして」
物凄い眼力で、雄也がガン見している。
俺が料理を口に運ぶのを、今か今かと待ってるみたいだ。
「美味しい…」
「良かった!さあ、どんどん食べて」
それはお世辞とかじゃなく、店に並んでもおかしくないくらいのレベルで。
イケメンなうえに料理も出来るなんて、ズルいだろ…
「慌てて食べなくてもいいよ」
「えっ…」
「ご飯粒ついてる…」
俺の口端についてる米粒を指で摘み、それを雄也はパクリと食べた。
「俺…いっぱい食べる人て…好きだな…」
なんだか恥ずかしくて、俺は俯き加減でモグモグと口を動かした。
雄也は意外と女性的で、嫌な予感が駆け巡る。
もしかして、
雄也は――…
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