short
□あなただけ
2ページ/8ページ
.
部屋に着くなり、
身体を壁に押しつけられて、息さえも奪われてしまうような深いキス。
「…って、シャワー浴びさせて」
「いいよ…そのままでも…」
「やだって…俺、汗臭いんだもん」
そう言うとバスルームに足を運んで。
ズボンのポケットから携帯を取り出せば、メール受信が1件入ってた。
見た途端、俺は愕然と立ち竦んだ。
それは薮からのもので…
『今、どこにいる?』
『お前が男とホテルに入っていくとこ見たんだけど』
こんな汚くて浅ましい自分…
薮だけには、知られたくなかった。
胸が押し潰されたように痛くて、もう消えてしまいたい…
俺は携帯を握りしめると、必死に声を押し殺して泣いていた。
溢れ出てくる涙は、どうしようもなくて。
確実に薮には嫌われたなと、俺はそう思っていた。
.