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□あなただけ
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部屋に着くなり、


身体を壁に押しつけられて、息さえも奪われてしまうような深いキス。


「…って、シャワー浴びさせて」

「いいよ…そのままでも…」

「やだって…俺、汗臭いんだもん」


そう言うとバスルームに足を運んで。


ズボンのポケットから携帯を取り出せば、メール受信が1件入ってた。


見た途端、俺は愕然と立ち竦んだ。


それは薮からのもので…




『今、どこにいる?』

『お前が男とホテルに入っていくとこ見たんだけど』




こんな汚くて浅ましい自分…


薮だけには、知られたくなかった。


胸が押し潰されたように痛くて、もう消えてしまいたい…


俺は携帯を握りしめると、必死に声を押し殺して泣いていた。


溢れ出てくる涙は、どうしようもなくて。


確実に薮には嫌われたなと、俺はそう思っていた。





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