饅頭みたいに甘い話♪
□優しい妖と人の子
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小さい頃から、人には見えないものを見た。
俺はその日、一つ目のドデカイ妖怪に追いかけられていた。
そいつは、一つ目入道という。
名のある、妖怪で。
何故か、ニャンコ先生・・・いや。
斑を知っていた。
「あの斑を飼い慣らす人の子に興味があって、来てみれば。なんだ、このひょろっこい非力な人の子は!斑に何をした!」
そう言って、俺に襲い掛かってきたもんだから。
俺は咄嗟に逃げたんだ。
話をしようにも、俺がなにか術を使って斑を縛っていると。
そう思っている一つ目入道は。
俺の話を聞いてくれそうにない。
件のにゃんこ先生は、パトロールという名の散歩に出かけたばかりだった。
しかも、この一つ目入道は。
気配を消す能力に長けているらしかった。
俺は、必死で逃げたが。
行き止まりに入ってしまった。
「妖に掛けられた術は、術者を亡きものにすれば。解けると聞く。お前を亡きものとし。斑を解放する!」
「俺は、術者じゃない!!斑には、何もしていない!」
「嘘をつけ!!」
もう、ダメだと思ったけど。
俺は、無意識に叫んでいた。
「にゃんこ先生!!助けて!!」
目を瞑って、叫んだとき。
俺の目の前に風が吹いて。
何かが着地した音がした。
「斑!」
「一つ目入道。久しぶりだなぁ。これは、私の獲物だ。手出しはしないでもらおうか。」
「にゃんこ先生。」
「夏目。下がっていろ。」
「分かった。」
「何故だ!斑!!」
「何がだ。」
「何故、そんな貧弱な人の子に従っている!」
「従ってなどいない。ただ、気まぐれにこれの用心棒をしているだけだ。」
「用心棒だと?」
「あぁ。これが死んだら、友人帳を貰い受ける約束でな。」
「そんなもの。喰って奪えばいいものを。耄碌したか?斑。」
「耄碌だと?試してみるか?」
にゃんこ先生の後ろに隠れて。
2人のやりとりを聞いていた。
ちょっと、怖くて先生の毛を掴んだら。
尻尾で守るように包まれた。
それに、安心してる俺がいる。
「斑。私と共に、昔のように暴れ回ろうではないか。」
「断る。私は、この人の子のお守りで手一杯なんでな。」
「そんなに、その人の子が大切か?」
「これは、お前が思っているよりも。何倍も強いぞ。小物なら、ゲンコツ一つで蹴散らせるくらいだ。」
「俺には、効かんぞ。」
「それに、今の生活が気に入っている。うまい酒もうまい飯も食える。これといると、退屈せんしな。」
「そうか。では、俺がその人の子を喰ってやるとしようか。そうすれば、またお前と暴れ回れる。」
「一つ目入道。本気か?」
「あぁ。本気だ。」
一つ目入道がこちらににじり寄ってきた。
「にゃんこ先生。」
「心配するな。」
「うん。」
先生の尻尾が、さっきよりも強く俺に巻きついた。
俺を守るように。
不謹慎だけど、かっこいいって思っちゃったんだ。
俺は、最近おかしい。
先生にドキドキしてるんだ。
多軌に相手を明かさずに相談したら。
「それは、その相手に恋してるのよ。」
って、言われた。
俺は、自分の気持ちに気付いて。
納得した。
この大妖斑が好きだと。