小説
□第一夜
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「煌帝国に行ってもいい?」
突然そう言い出したリムに、俺は取り敢えず驚いた。
いつかの夜、シンドリアでアラジンとリムが、急にマグノシュタットに行くと言い出した時の事を思い出す。
あの時、相談無しに勝手に決められ、仲間外れにされた感覚を覚え、不貞腐れてしまい、微妙な関係となってしまった。結果的には仲直りをして今は笑い話かもしれないが、前回と同じ様にはしたくない。
アリババが何と言おうかと迷っていると、真っ先に口を開いたのはまさかのアラジンだった。
「どうして急に煌帝国に行こうと思ったんだい?」
え?2人の意見じゃねーの?
「…悪いことが起こる気がするんだ。」
「「「悪いこと?」」」
「そう、悪いこと。」
「それは、アルサーメンと何か関係があるんですか?」
モルジアナの問に、んー。と唸ったリムは間を開けて徐に口を開く。
「…わかんない。でも、何か悪いことが起こりそうな気がするんだ。なんというか……この世界を揺るがす大きな大きな何かが。だから、あたしは煌帝国に行きたい。」
「そ…そうか!じゃあ、俺達も…」
「ううん。みんなは来なくていいよ。」
「へ?」
話を遮ったリムの言葉に、思わず素っ頓狂な声が出た。
「あたし1人で行きたいんだ」
やった事のあるやり取りに、心の奥にイライラに似たむず痒さを覚える。
これじゃ、前と同じじゃあないか。
何の相談も無しに勝手に決められて、こっちの意見なんて一切取り入れようとしない。
きっと1人で行きたいの一点張り。
まるで、一緒にいたいと思っているのは俺だけみたいじゃないか。
「相談もせずに勝手に決めてごめん。でも、もう決めた事だから、あたしは煌帝国へ行くよ。」
いつもは穏やかなオレンジ色の瞳が、強く凛として見えた。
「「…」」
「…リムがそう決めたなら、そうするといいよ!でも、アリババくんが寂しそうだから早く帰ってきておくれよ」
「なっ…!!だ、誰が寂しいかよッ!!ガキじゃあるまいし!!」
「アリババくん、顔が真っ赤だよ!」
「う、うるせぇぇええ!!」
赤くなった顔を必死に隠すアリババと、彼を弄るアラジンのやり取りを眺めてモルジアナは微笑んでいる。
「モルさんって、ホントよく笑うようになったね。やっぱり君は笑顔の方がかわいいよ」
のんびりとした声のリムの言葉に、一気に顔に熱が集中してくるのがわかる。
思わず、赤くなった頬を両手で挟み込み、恥ずかしさとドキドキが収まるのをただ待っていた。
そのまま4人で疲れて眠るまで、はしゃいで笑ったのは言うまでもないだろう。
次の日の話し合いにより、4人は1度シンドリアへ行く事となった。その後リムは煌帝国へ、アラジン、アリババ、モルジアナは時を見て再び旅に出る事となった。
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