*ヴィジュアル系*

□ダブルベッド
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シングルだと狭いからって言うから買ったダブルサイズのベッド
2人で寝るには丁度良かったのに、1人だと広過ぎる
使う人のいない枕を抱き締めると匂いが消え始めてる

いつまで1人にさせるのよ、と文句を言いたいけど
仕事なんだから、仕方無いでしょと自分で言い聞かせた

会いたい、寂しい
それを伝えられる手段はあるのに言えないのは重い女と思われたくないから

もう少しすれば戻って来るから、それまで我慢をすればいいだけなんだから

毎晩自分に言い聞かせながら目を閉じる





布団とは違う暖かさに目を覚ます

「…眞弥…?」
「起こした?」
「…帰って来たの…?」
「もうすぐ出る」

ダブルベッドが埋まる
待っていた眞弥の香りに包まれると安心するのにこれももうすぐ無くなる

「名無しさん、もう少し待っててな」
「…あたしは平気だから仕事、頑張れ」
「…寂しい時は寂しいって言いなよ」
「…眞弥?」

抱き締められる力が強くなる
久々に聞こえた心音がずっと残ればいいのにって思う

「俺は寂しいんだけど」
「仕方無いでしょ」
「名無しさんに会いたいし」
「眞弥の仕事なんだから」
「だから名無しさんも言ってよ」
「だって」
「寂しいとか会いたいとか。ちゃんと言って」
「眞弥…?」

顔を上げると不安げな眞弥の顔が見えた

あぁ、眞弥も同じ気持ちだったんだ

「来月には帰って来るから」
「…長いね」
「待ってて」
「うん」
「でも寂しい時は言って」
「分かった」
「名無しさんが寂しい時は俺も寂しいから」
「同じだね」

あたしが寂しい時は眞弥も寂しい
あたしが会いたい時は眞弥も会いたい

同じだって分かったからもう平気

「眞弥、好きだよ」
「俺も、名無しさんの事好き」

あたしが好きと思えば、眞弥も好きと思ってくれる



ダブルベッドが空いた
でももう、寂しくない

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