STORY
□僕は明日、偽りな君に恋をする ☆★
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外は、年末と言うことで、店や商店街は大忙しのようだ
「そろそろ今年も終わりだな」
車内で同じ学部の八乙女が言った言葉が、伊野尾の胸を少し重くした
今年こそは彼女を作る、なんて周りに公言していた筈なのに伊野尾の隣に並んでいる肩は野郎の肩
しかも同級生と来たら、溜め息か悲しみの涙しかでない
「お前。今年は、彼女作るとか言ってたくせにな」
「まあまあ」
テキトーに返事をすれば、その話題を耳に入れないように携帯に目を落とした
そんな姿を前に八乙女は「なにが、まあまあだ」と言って頭を叩く
「でも、この前の告白はどうなったんだよ」
伊野尾もモテないわけじゃない。いや、むしろモテるほうだ
当然、今年に入って、何度かは告白された。女もあれば、男にも…
でも、なんかパッとしないっていうか。なんか違うんだよね
「見ての通り、振りましたけど」
「おまっ!そこだよな。そこ!振るからいつまでたっても出来ないんだよ。分かる?」
「でもさ、なんか違う気がしたのー」
「出たよ。お前のなんか違う気がして…じゃあ。どんな人だったらいいんだよ」
突然の質問に、伊野尾は頭をフル回転させて考える
でも、そんなの簡単に答えがだせるわけでもなく「やっぱり、テキトーじゃん」なんて言いながら、止まった駅で八乙女は降りる
「じゃ、明日」
「うん。明日」
閉まる扉越しに、歩いて行く八乙女を伊野尾はボーッと見ていた
俺の運命の人ってどんな人なんだろう…
「あの!これ、落としましたよ」