STORY
□裏と表と偽りか真実か ☆★
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「ごめん、返信するの忘れてたんだ」
《既読スルーで怒んのかよ。別れよ》
「今日も頑張りますね!」
《あー。今日もだりー》
「食事なんてどうですか?」
《この女、胸でけぇな。ヤりてえ》
真っ暗な世界に聞こえた2つの声。2人の人が話していると思っていたけど、実際は耳を済ませば同じ声であり、同じ人から聞こえてくる
「い、のおさん…聞こえますか…?」
そんな声の中、間近で聞こえた女の人の声に目を覚ます。目の前に映るのは、綺麗な病室の天井
「あ、れ…?ここは…」
「伊野尾さん。目が覚めましたか?」
体を動かそうとしても痛みで動かない。そんな伊野尾を見て声をかけていた女の人に「安静にしててください」と優しく声をかけられた
ゆっくりと顔だけを動かして女の人の姿を確認する
「自分の事分かりますか?」
「は、い」
「どうして、ここで寝ているのかも覚えていますか?」
彼女のその言葉と共に痛い頭をフル回転させて記憶をよみがえらせる
たしか…
買い物に行った途中、信号を渡っていた子供が、信号無視した車にひかれそうになっていたのを…
「俺、車にぶつかった…?」
「はい。そうです。記憶には異常はなさそうですね」
彼女は書き慣れているのか、分厚いファイルの一ページをめくり、ボールペンを走らせた
Vネックで青い制服を身にまとっている
彼女はこの病院の先生だと言うことは、聞かなくてもわかった
丁度Vネックに挟んであった名札に目をやった
「ひ、やま…み、ほこ?」
「ああ。私、伊野尾さんの担当の緋山です」
名札プレートを伊野尾の顔の近くに持っていくと笑顔で答えた