STORY

□無自覚ヒーロー
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スタッフに頭を下げて、局を後にする
空は真っ暗で、都会だからか綺麗な星は姿を見せない

「じゃあ、大ちゃん。俺はこっちだから」

駅が見えてきた頃、一緒に収録していた薮ちゃんが手を振りながら角を曲がる

いつもはマネージャーの車で帰る筈なのに、予定がどうとかで珍しく歩いて帰宅していた

「うん。じゃあね」

手を振り返す。子供の時を思い出し、少し微笑ましく思う

背中を向けて歩き出す薮ちゃんだけど、すぐに立ち止まり振り返った

「薮ちゃん?」

「最近、不審者とか出てるらしいから気を付けろよ?」

思いもしなかった言葉に、目を丸くした

いやいや。俺、もう30近いんだけど、

そう言いたい衝動にかられたけど、優しさで言われたその言葉にグッと堪え出てきた言葉は...

「薮ちゃんもね!」

これだった

「俺、襲われたら大ちゃん助けに来てくれよー?」

「嫌だよ。めんどくさい」

「えー。カッコいい大貴見たーい」

口を尖らせて言う姿に、少し笑ってしまうがすぐに顔を作り「気持ち悪い」なんて冗談を言ってみる

「なんか、大ちゃん冷たいな」

「薮ちゃんが、構ってちゃんなだけでしょ?」

なんて言った時、ふと夜に男2人が何の話題で騒いでいるのか...とだんだん恥ずかしさに襲われる

周りを見渡し、誰も見ていないのを確認すれば「じゃ!」とテキトーに挨拶して走り出した

後ろで薮ちゃんが何か言っていたが、聞こえるはずもなかった
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