STORY
□May I call you?
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「ぅっ!」
有岡の息を飲み込むような音が、響き渡った
起き上がらせる事のできない上半身。仰向けのままに見上げる天井
真っ暗な部屋
開けていた窓から涼しい風が吹き、カーテンを揺らした
頬を撫でるような風と共にツーっと涙が頬を伝う
「ゆ、め...」
かすれるような声
布団から出した手で涙を拭えば、もう一度、目を瞑った
一人ぼっちの俺...
___『ばいばい。大ちゃん』
手を振り、笑顔で背を向け、俺を置いていくのは一番に愛する人だった
『待って、伊野ちゃん』
届かない。
そう分かった途端に、背中は遠くなっていった
夢だと分かってる
それでも、寝る事のできない俺は、思い出すたびに涙を垂らした
「明日...仕事なのにな」
瞑ったばかりの目を開け、時計を見れば深夜2時を指していた
明日は大切な仕事。そう分かっても、眠れず、ただ頭は冴えていくばかり
伊野ちゃんの声が聞きたい...
今、電話したら迷惑かな
ウザがられるかな
そう思いながらも、体を起こすと、携帯を手に取った
いつもなら、なんの躊躇もなくかけられるはずの電話なのに、今は違う
出なかったらどうしよう
無視されたらどうしよう
「女々しすぎるよな」
情けなさと同時に溜め息が溢れた