STORY

□妄想キミ、実物キミ ☆★
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今日は晴天だった

「おはよー」

久しぶりのメンバー全員で雑誌撮影の日

なんだか気合いはいっていたせいか、寝坊をすることなく現場へと向かった
楽屋のドアをスマートに開けると、楽屋独特の匂いが俺を包む

「あれ?」

俺の体が固まった
皆、もう来ているものだと思っていたせいで心の準備もなにもできていない

「あ、い、伊野ちゃん…」

ソファーに座ってうたた寝していた1人の男。ずっと会いたかった人
胸が高鳴り、体が強張る

あれ…?でも、他は…?

そう思い、チラリと時計を見れば集合時間よりだいぶ早く来ていたのだと今頃になって知り、緊張が増す

皆が来るまで、2人きり

そう思った途端に、目に入るは伊野ちゃんの綺麗な顔

キスしたいな…

そんな欲求だけが生まれ、自分を止められなくなる

「伊野ちゃん」

返事はない

寝ている

そう確信すれば、話は早かった

ソファーで目を瞑る伊野ちゃんにゆっくりと近づけば、顔を覗く

「伊野ちゃん」

もう一度、名前を呼んでみる
でも返事は当然ない

少しだけ、少し…

そう思って口を近づけた…
だけど、すぐにその口は止まった

「やっぱり、無理だよ」

小さな声が楽屋に響く。罪悪感と恐怖に襲われ、断念すると小さく息を吐き、一歩ずつ後ずさった

大切なメンバーだもんね

そう自分に言い聞かせる自分がまた、惨めだった

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