STORY
□さりとて不敵な恋
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人通りの少なくなった道路をトボトボと歩いて帰宅する
「ただいま」
誰もいないと分かっていても出した声は虚しく消えてゆく。木は、クタクタの体を引きずって中へと入った
伊野尾と寝たあの日の夜から早くも1週間が過ぎている
あれ以来、伊野尾とは会っていない。というよりは向こうが避けているような気がしてならなかった
「よいしょっ、」
重たい脚をベッドに投げると、決まって小さく出るため息をつく
肌寒くなり、静かな部屋には窓に風が当たる音が響く
“「た、かき...っぁん、、ッ、」”
あの日の伊野尾の声が脳裏を過ぎ、頭を抱える
どれだけ、好きなんだよ
ネチネチと未練たらしい自分に嫌気がさし舌打ちをした
「寝よ」
お風呂は明日でいいやと、何もかも面倒になり寝ることに専念する
顔を布団に押し付けるとすぐに、頭がふわふわとしていく
そんな時だった、携帯のバイブ音が聞こえ眠たく自然とつむっていた目をゆっくりと開ける
誰だよ、こんな時間に
ストレスと疲労で、無駄にイライラしてそんな自分にもイライラする
体を起こし、時計を見ればもう夜中の1時をすぎている
「…誰だ?」
首を回せば、携帯を手に取り画面に目を落とした瞬間に、木はベッドから転び落ちる
目を疑い、何度も何度も画面を見直してしまう
今度は、目を擦り頭をふり確認するがそこに映し出された名前は変わらない
「い、のおくん...」
胸が高まるのが嫌でも分かった