STORY
□裏と表と偽りか真実か ☆★
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「気分悪いとかあります?」
寝たきりの伊野尾を見下ろし、緋山はカルテらしき物をせっせと書く
「特には…」
「そうですか」
「あの、俺ってどの位で退院出来るのでしょうか?」
別にこれと言って大事な用が入っているわけではない
でも、やっぱりいつも通りの生活には一分でも早く戻りたい
そんな願望からか伊野尾は聞いてみふ。すると、彼女は持っていたボールペンで頭をかくと「そうですね」と小さく呟いた
「時間の経過と共に決めていきましょう」
笑顔で言った言葉を聞いて少し安心した。そんな時だった…
《言えるわけないじゃない》
「…ほえ?」
「伊野尾さん?」
ふと、どこからか声が聞こえた。この声からして彼女に違いない。でも、目の前にいる彼女は口なんて開いていない
だとしたら、心の声
「どうかされました?」
「俺、骨折だとかしちゃってるんですか?」
「え?どういう事ですか?」
困った顔をして言う彼女に、問いただすようにして言葉を続けた
「さっき、ぶつかった事を口にした時に貴方は“ 記憶には ”って言いましたよね…記憶以外、どこかあるんですか?」
「それは…」
《今、話してしまっていいのかしら…でも》
「緋山先生!」
押し切るように大きな声で名前を呼べば、ハッとして伊野尾を見た。揺れる瞳に、胸がドキドキと騒ぐ
そして、彼女は小さく息を吐く
「貴方の左足は、今動かない状態なんです」
《お願い、責めないで》
「ほえ?」
彼女の心の言葉と共に聞こえてきたのは、俺の予想だにもしない言葉だった