STORY
□裏と表と偽りか真実か ☆★
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「右脳を強く打ったことによって今、麻痺してしまっているみたいなんです」
「そ、んな」
彼女の言葉は、想像を遙かに越えるほど残酷で伊野尾の心にはよく応えた
止まってしまった俺を見て、彼女はしまったとばかりに頭を抱えて振った
「う、そですよね」
「本当です」
《やっぱり、私はこの仕事嫌いだわ》
「でも、」
「本当は、退院するにはだいぶ時間が必要になります。リハビリをしていかないと普通の生活をするには厳しいでしょう」
「リハビリをしたら治るんですか?」
「100%とは言い切れません」
《患者さんのこんな顔、見たくないのに…》
所々に入ってくる彼女の心の声に伊野尾はこれ以上迷惑はかけられないと思う
ただ、パニックな頭をとにかく動かし、平常心を保とうと努力をした
「そうですか。でも、少しは回復するんですよね?」
「はい。それは、確実です」
眉を下げて言う彼女に戸惑ってしまう。
笑わないと、心配をかけないようにしないと…じゃないと、彼女が仕事に戻れなくなる
「なら良かったです」
「珍しいですね。こんな事言われても、笑顔でいられるなんて…」
《少しは安心していいのかしら》
「少しでも回復するならいいですよ。それに、左足が動かない所で右足が動かせるので」
「ポジティブですね」
《これなら、安心していられるわ》
「そうですか?」
無理やり笑顔を作ってやれば、緋山は本当に安心したかのように優しく笑った。
そして、すぐに「行きますね」と言い持っていた資料を両腕の中にしまい病室を出た
そこではじめて、俺は個室なんだと知った