短編1

□そういうところ
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〜彩side〜





今日も私は、とある後輩の元へと近づいていく。




彩「おはよっ」


『…うわっ!…びっくりした…おはようございます』





そうやって微笑んでくれるのは、私の彼女の飛鳥。

その笑顔を見るだけで私の心はあたたかくなる。


彩「今、朱里と何話してたん?」


『別に何も話してませんよ』


彩「嘘やん、さっきめっちゃ笑ってた」


『…そうですか?』


彩「そうやで」


『自覚ありませんでした』



そう、飛鳥はいつもこんな態度。


人前でイチャイチャするのが得意ではないから、こういう感じで終わってしまう。

メンバーからは

「ほんまに付き合ってんの〜?」

なんて言われる始末。




彩「なんでそんなに堅苦しいん?」


『堅いですか?』


彩「うん」


『…でも彩さんは先輩ですから』


彩「恋人やのに?」


『……』


彩「飛鳥」


『…癖なんですよ』


彩「そうなん?」


『はい』


彩「朱里とは普通に話せてるのに?」


『…いや、それは…』


彩「なーんか寂しいなぁ」


『…気をつけます』





私はさっき、朱里と梓とめっちゃ楽しそうにしている飛鳥を見てた。



こんな堅い敬語を使ってるのって私だけにちゃう?…って最近は思ってんねん。






「山本彩さーん」


彩「あ、はい!」


「ちょっと来て〜」




スタッフさんに呼ばれたから、楽屋をでる。



既に収録は終わっているから、あとは帰るだけ。



あ、飛鳥に一緒に帰ろって言うの忘れてた。



…先に帰っちゃうかな、飛鳥の事やから。






彩「すみません、お待たせしました!」


「おぉ、こっちこっち」


彩「どうしたんですか?」


「次の生誕祭の準備出来てるかなって」


彩「あぁ〜、もうすぐで終わります」





今後のこととか、色々話してたら結構遅くなった。






彩「失礼します」


「気をつけて帰りや」


彩「はい」





楽屋への途中ではメンバーとちょくちょくすれ違う。




…私もはよ帰って、ゲームのガチャひこ






ガチャっ






『おかえり〜』



え、飛鳥やん



『お疲れ様』



待っててくれたんや



ねぎらいの言葉もかけてくれて、そんな些細な気遣いさえも嬉しかった。




『帰りましょう』


彩「待っててくれたん」


『え、帰る約束してませんでしたっけ?』



平然と言ってきた。


…そんなんしたっけ?



…いや、してへんよな



彩「してへんで」


『……』


彩「…飛鳥?」


『もう…』




ちょっと耳を赤くして…飛鳥は俯いた。




『察してください』




…ん、察する?




彩「え、分からんねんけど」


『もういいです!…早く帰りますよ』







あ、




そーゆうこと?






彩「なぁ、教えてくれへんの?」


『教えません』


彩「分からんって〜」




…多分そうやんな



なんか、にやけてしまうわ





『分かってますよね?』


彩「分からん」


『嘘や〜、絶対分かってる』


彩「言って?」



そう言うと、飛鳥は声をちっさくしながらも答えてくれた。




『…約束、してませんでした』


彩「…ということは?」


『勝手に待ってました』




やっぱり。


約束してたていで、平然と嘘をつきよった。


待ってたって言うんが恥ずかしかったんやろうな。


そういうところが可愛いねん。




彩「ふふっ、ありがとう」


『彩さん、どっか行っちゃったんですもん』


彩「ごめんって〜、待っててって言おうとしたんやけどな」


『一瞬先に帰ったのかと』


彩「私が飛鳥を置いて帰るわけないやろ〜」


『そうでした』


彩「飛鳥は先に帰るけどな」


『それは昔の話ですっ』


彩「あははっ、そうやったな」





私たちは二人でスタジオを出る。


その途中で朱里に会った。




朱「え、一緒に帰ってるやん」

彩「当たり前やろ、付き合ってんねんから」

朱「ほんまやったんや」

彩「失礼やな」

朱「なんか違和感」

彩「おいw」



朱里は編集が待ってるからと、急ぎ足で私たちの横を通り過ぎていった。




…やっぱり、傍から見ても付き合ってるようには見えへんのかな




そうなこと思っていたら、

飛鳥から手を繋いできた。








え、どしたん


いつもは繋いでこーへんのに
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