キミを離せない

□キミを離せない〜9
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ベッドに仰向けで寝転がる私。

天井をボーーーっと見つめ続けてどのくらいの時が経っただろうか。


明日もお仕事なのに、こんな腫れた目で出演なんて絶対できない。
ゆっくりと立ち上がり、凍ったペットボトルを目に当てる。…明日、マシになってるといいな。


心が一旦落ち着いて、私の中に現れた考えはひとつ。


いつ、別れ話を切り出すか。


今までズルズルと引き伸ばしてきたこの関係は、もう終止符を打つべきだろう。

絶対に自分から別れを告げてやるもんかと心に誓っていたはずなのに…

できればみるきーさんがいないところがいいな。最後くらいは…ふたりっきりで話したいから。

それにしても、どうして彩さんは今まで私を振らなかったんだろう…
いくらでも機会はあったはずだ。この前家に呼んでくれた時だって。なんなら、家に呼ばなくたって良い。愛の言葉を私なんかにかけてくれなくたって良いはずなのに。どうして、あんな風に好き≠チて言ったのか………分からない。分かりたくもない。


別れよう≠チて言ったら、彩さんはどんな顔するかな?

驚いて引き止める?…いやいや、まさかね。この期に及んで、まだそんな淡い期待を抱く自分に呆れる。

わかった、って真顔で告げてその場から立ち去る?…かもしれない。

ごめんな、夢莉…って謝られるのかな?ありそうだ。だって、あの彩さんだもの。あの人が素っ気なく、じゃあね…だなんて立ち去るような惨い人間ではないことくらい、わかってる。

だって、そんな謙虚なあなたのことが好きだったんだから。



私に別れを告げる勇気はあるのかな…

今だからこそ、、、たくさんの思い出。彩さんの良いところばかりが浮かんでくる。


私が上手くダンスについていけなくて、落ち込んで泣いたあの日。
彩さんが真っ先に気づいてくれた。そして駆け寄り、頭を撫でながら言ってくれた。

「夢莉ならできるで」

背中をぽんぽんとあやすように叩いてくれた、あのぬくもりは忘れられない。


私にも、なにか彩さんのためにできることはないか、支えられないかなって思っていたけれど……



なにもなかったみたいだ。




もう、彩さんのことを考えるのはやめよう。

彩さんには支えてくれる人がいる。

私ではない、素敵な人が。


だから、

だからこそ、

彩さんのために言うんだ。

言わなくちゃいけない。

私の一言で全てが終わる。
築いてきた愛も関係も信頼も、全てを手放す時が近づいている。



穏便に、誰も傷つかないように。


別れても、彩さんと私がただのメンバーに戻れるように。ただの先輩と後輩に戻れるように。





覚悟を決めるんだ。


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