キミを離せない
□キミを離せない〜10
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〜夢莉side〜
次の日、思ったよりもひどい顔じゃなくてよかった。彩さんに気を遣われるのも気が引けるし。
楽屋でスマホをいじって収録まで時間を稼ぐ。
朱「夢莉」
『あ、りんちゃん…おはよ』
朱「ほんまに、あんたって子は。何も無かったみたいに過ごしてるけどねえ…」
呆れたようにため息をつかれた。
この前の彩さんとみるきーさんの件だろう。
『まだ言ってるん…』
朱「やっぱりな?何回も考え直したんやけど……やめたほうがいい」
真っ直ぐと誠意を持って伝えられたもんだから、耐えきれなくて目線をそらす。
『わかってるよ』
朱「わかってへんやん」
『…言おうと思ってる』
朱「え」
アカリンは拍子抜けしたようで、目を見開いて固まった。
『タイミング見計らってるだけ。…ちゃんと言うよ…りんちゃん』
朱「…そ、っか」
少し俯いてから、ちょっぴり励ますように、
朱「私が養ってあげるから!ね!今だけ、がんばりや?」
『………りんちゃんのヒモになる』
朱「ふふ、…うん。任せて」
頭をふわりと撫でてから、アカリンはメイクポーチを持って鏡のとこへ行ってしまった。
…タイミングか
そんなの読めるわけない。だって隣にはいつもみるきーさんがおるんやもん。
LINEで呼び出す…?直接呼ぶ?
悶々と考えていたら、誰からかメッセージが送られてきた。
〔収録のあと、会えへん?話したいことがあんねんけど(^^)あ、そんなにビビらんといてな?ただの世間バ、ナ、シ♡〕
みるきーさんからだった。
…世間話??
いや、どうせ彩さんとのことだろう。
美「わかってると思うけど、彩ちゃんはわたしのやから。早く別れてくれへん?」
と、こんなところだろう。
なにそれ。私にだってプライドはある。みるきーさんに言われなくたって、自分の口から先に別れを告げることくらい……ちゃんとできるし…
私は送信ボタンを押した。
〔行けません。すみません。〕
端的にスパッと送ってやった。
へへんっ、どんなもんよ。
……やりすぎたかな?
いくらなんでも先輩…だ
うわああぁ…やばいかな
やっちゃった………
怒りに任せてポチッと、、、
送った矢先に頭を抱える。
送信取り消すべき?謝罪すべきかな…?
おろおろおろろろと、頭の中がパニックに陥っている時、不意に声をかけられた。
彩「夢莉…」
『…っえ、!彩さん!?』
あまりにも突然過ぎて、めちゃくちゃ驚いてしまった。
彩「あ、え、、と。急に話しかけてごめん」
『ぁ、いえ……いえいえ…全然大丈夫、です』
いつもの彩さんと違って、大人しいから調子が狂う。
彩「昨日のことで謝りたくて……話できる?」
『……昨日のことは何も気にしていないので、大丈夫ですよ』
口から嘘がホイホイ流れ出た。
気にしてないわけない。昨日からずっと気にしてる。
彩「いやでも……夢莉と話がしたいねん」
…うれしい。素直に、そう言ってくれただけで救われた気がする。
『…分かりました』
って、思い通りになるわけなくて。
美「あれ?なにしてんの」
冷たい声が降りかかった。
彩「ちょっと、夢莉とふたりで話があるねん。ふたりで」
わざとふたり≠強調するように言ってくれたけど、逆効果みたいだった。
美「なに、抜けがけ?駆け落ちでもする準備?」
いつもニコニコなみるきーさんからは想像できないほどに無表情で冷淡な声色。
彩「っな、わけないやろ!…美優紀、頼むからふたりにさせてや」
美「嫌や〜〜、わたしに隠し事なんてしやんといて?」
彩「あのなぁ…!いい加減にしろって!!」
突然声を荒らげたから、ビクッと肩が動いてしまった。
美「……」
みるきーさんからの言葉はない。
彩「もう付き合ってられへん」
美「…へえ、そんなこというんや?」
バチバチと火花が散っているが、私にはなんの事だかさっぱり分からない。
え?え?え????どうなってるん、、?