キミを離せない

□キミを離せない〜2
1ページ/3ページ


〜夢莉side〜



私は彩さんの観察をやめて、自分の耳にイヤホンを突っ込んだ。

そして机の上にうつ伏せになる。

この世界から全てを消し去りたかった。シャットダウン。

…ふふっ、この言い方、自分でも中二病っぽいと思ってしまった。



さっきりんちゃんと話していたけど、やっぱり彩さんを取られるのは嫌だ。

どうしたらこっちに来てくれるんやろ

悶々と一人で考える。


と、その時いきなり後ろから誰かにこしょばされた。


コチョコチョコチョ……



『……わっ、!』



はね起きてその犯人を見ると、梓だった。

『もう〜〜やめてよ〜』

梓「ふふっ、良い反応」

梓は隣に座ってきた。

梓「なに聴いてたの?」

『ん?…あぁ、これは』

梓「聴かせてー!」


私が梓に差し出すのと同時に、梓はイヤホンを取って耳につけた。


梓「ああ〜!この曲知ってる」

『良いよね〜〜』


こうやってイヤホンを半分こにするのも、彩さんとやりたかったな…


なんて思いながら横目で彩さんを見ると、彩さんはみるきーさんに腰を抱き寄せられていた。


なにあれ。

もうほんとになんなの。

彼女は私なのに、、、




一気に気分が下がった。



梓「なんか今日夢莉ちゃんテンション低いね」

『…そう?』

きっと彩さんが私のところに来てくれないからだ。

私はまた目を閉じた。


今はこの音楽に酔いしれていたい気分だ。

…もう、いいよ

彩さんなんて知らない




すると、優しく頭を撫でられた気がした。


パッとその方を見ると、梓がナデナデしてくれていた。


『なに…?いつもならわっしゃわっしゃ触るのに』

梓「んーん、夢莉ちゃんも悩むことあるんやなって」

『そりゃあるよ〜』

梓「やっぱり可愛いなぁ夢莉ちゃんは」

『なんでそうなる』

梓「ふふっ、うふふっ」

『笑わないで〜』


こうやって梓とおしゃべりしていたら、後ろから彩さんが来た。


彩「梓ちょっとそこ変わってくれる?」

梓「あ、はい!」


梓はイヤホンを取って私に渡してきた。


梓「ごゆっくりどうぞーー」


…今、梓と話してたのに。


彩「何聴いてたん?」

彩さんは呑気にそんなことを聞いてくる。

なんで来たんよ…


『…別に』


来てくれて嬉しかったのに素っ気ない態度をとってしまった。


いや、私は怒ってるんだからな…!


わざと彩さんの方は見ずに自分のスマホに目を落とした。
彩さんも来たことだし曲でも変えよう…そう思ってスイスイと画面を触っていたら、



彩「夢莉、拗ねてんの?」


こんなこと聞いてきた。


『拗ねてないし』

彩「嘘だ〜。絶対拗ねてる。私がそばにおらんかったからやんな?ごめんな?」


分かってるなら、なんで来なかったの。

…ずっとイチャイチャして。



『…みるきーさんのところにでも行けばいいじゃないですか。なんで来たんですか』


また冷たく言い放ってしまった。


こんな言い方をしてしまったのに、彩さんは


彩「ごめんやん。…そんなに怒らんといて?」


眉を垂らしながら、私の頭を撫でてきた。


…近い


彩さんが近くに来るとすぐにドキドキしてしまう。


なんだか彩さんに弄ばれているようで、悔しい。



彩「…何したら許してくれる?」


そんなこと聞かれてもなお、突き放すなんてことはできなくて、素直に欲望をぶつけていた。



『…ぎゅってして』

彩「……え、?」

『……早く』

彩「ふふっ、わかった」



その言葉と同時に私は彩さんの温もりに包まれていた。

彩さんは小さいくせに、人一倍あったかい気がする。


私はいつの間にか彩さんの背中に手を回していた。



彩「どうしたん、今日は甘えたさんなん?」



嬉しそうにそう言ってきた。

絶対彩さんいまニヤニヤしてるよ…


でも、いいんだ。


彩さんをみるきーさんのところなんかに行かせたくない。


このままずっとずっと私の腕の中に閉じ込めておきたい。



そう思うくらいに大好きで、


キミを離せない。
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ