キミを離せない
□キミを離せない〜9
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〜夢莉side〜
ばかだった…
期待した私がばかだった。
もう期待しないと決めたのに。
まるで彼女を扱うみたいに私に触れて、私に微笑んで、愛おしそうに見つめてくる瞳に…まんまと騙されてしまった。
一応、彩さんの彼女という肩書きはついているのだけれど…今となってはそれはうわべだけのものだ。
…正直、もう私への愛がない事くらいわかっていた。何度聞いたか分からない程の、ハスキーな声で美優紀ッ≠ニ呼ぶあの瞬間。そのシーンだけが切り取られて私の脳内を蝕んでいる。
…悔しいなあ
じわりと目の前が霞む。
あんなに蔑んだような目で見られたのは初めてだった。彩さんは本気で私を嫌がっていたんだ。
…求めてしまったから?
…欲張ってしまったから?
越えてはならない線を、…踏んでしまったから?
「へへッ、、、っ」
笑うしかないよね、こんな状況。
彩さん、みるきーさんのことは受け入れていたのに、ね…
初めから分かっていたことだった。
どこからみても魅力的なみるきーさん。
女の私から見てもあの人はえろい。大人の女性というのはきっとあの人のようなことを言うんだ。あんな素敵な人に言い寄られたら、誰だって心を奪われてしまう、なんてそんな簡単なこと。…どうして分からなかったのか。彩さんはずっと私のことを好きでいる、なんて確証もないことに縋りついて…期待して。期待しないと決めても、やっぱりどこかで期待してしまう。それが人間だ。
そして、私は期待≠ニいう目に見えない魔物に、殺された。
愛って、なんなんだろう…
私が彩さんに抱いていた気持ちはなんだったのだろうか。
愛?それは本当に……愛?
愛なんかじゃなくて、それはきっと憧れ≠セったんじゃないかって思えてくる。
…そうでもしないと、胸が押しつぶされて、息ができない。
「…っ、……ぅ、ッ」
涙を堪えようとしても、歯を食いしばっても、溢れてくるんだからどうしようもない。
こんな時、誰かの胸にしがみついてあやしてもらう人が欲しかった。頭を撫でて、「大丈夫だよ、夢莉」って声をかけてくれる人が欲しかった。
…だけど、生憎そんなひとは
私には、いない。