第一部 … voyage

□“偉大なる航路”
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「おい大変だ!!!ナミ、光が途切れた!!」

進水式後も相も変わらず天候は土砂降りびゅうびゅうの嵐。そんな中私達は“偉大なる航路”を目指してローグタウンの灯台から出る光を辿って船を勧めていたんだけど、その光が途中で途切れた。仕方ないんだけどね、灯台の光だから延々と続くものでは無いし。
でもうちの船長はそんな当然の事が分かる頭では無くて、ずぅっと船首にぶら下がって光が途絶えた後の荒ぶる海を見ている。

「やべぇな!!“導きの灯”なのにな」

「ルフィ、灯台の光は普通途切れるものだから。それに私達にはナミっていうすごい航海士が付いてるから大丈夫だよ」

「あら、よーく分かってるじゃないの。方角くらい覚えてるから大丈夫よ」

尚もぶら下がる船長の傍に立ってそう言ってやれば、後ろからナミの自信満々の声が聞こえる。ナミに渡れない海なんてないんだよなぁ、絶対。多分じゃないのは私がどんな海を航海しているのか分かっているから。早く皆と同じ冒険がしたい。なんて、ルフィがナミにガミガミ言われているなか思ってしまう。

「………しかし、まいったな……このまま進むと噂通り……!」

ぽそりと呟く声が耳に滑り込んできた。ああ、確かカームベルトに入っちゃうんだっけ。…海王類に出会っても平常心だ、大丈夫大丈夫。会う前から怯えててどうするの、私。大丈夫だから!!とりあえず海に落ちない事だけを考えるようにしておこう。

「なまえー、何してるの。早く中に入って作戦会議よ」

「あ、はーい」

既にダイニングに向かっていた二人がこちらを見て声を掛けている姿に視線を移し、内心にまにまとだらしない笑みを誰こぼしてしまうのだった。なんか、本当に仲間なんだなーって実感して嬉しい。スキップしながら向かったら、濡れた甲板で転んで頭を打ったのでこれからは浮かれないようにしたい。ゾロ、見てたなら少し助けてくれてもいいんじゃないかな。

「“偉大なる航路”の入口は、山よ」

「山?!」

ウソップがナミの言葉に驚いて復唱してるけど私はもう把握済みなので笑顔で首を縦に振っている。

「おめェは何でそんな笑ってんだ、気持ち悪ぃ」

「うるさいなー、“偉大なる航路”入れるから嬉しいの!」

馬鹿にするゾロには適当に理由をこじつけといて、私は再度ナミへと視線を預けた。“偉大なる航路”の入口がなぜ山なのかを、流石は航海士、結構事細かく説明している。私は分かってるから視線を右往左往させてはお腹を抑える。お腹すいてきちゃったなぁ…ご飯まだかなぁ。今日はパスタな気分。でもサンジのご飯何でも美味しいから何でもいいかなぁ。

「なまえ、ちゃんと分かったの?」

「いひゃひゃ、分かっひぇるよ」

いけない、私ずっとご飯の事考えててあんまり話聞いてなかったや。適当に流して、また思考をご飯へと向ける。お肉…食べたいな。

「おーっ!いい天気だーっ!!」

「どういうこった、こりゃー」

「はっはっはっはっはっ!!!」

甲板で三人の大声が聞こえた。かと思うと、ナミは摘んでいた私の頬を離し、甲板へと駆けて行った。あ、これはもしや。

「しまった……カームベルトに入っちゃった………!」
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