第一部 … voyage

□ウィスキーピーク
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ウィスキーピーク、大きな覇王樹が目印の街が直ぐそこまで迫った。漫画で見た時よりも思っていた以上に大きくて、船で一人うずうずと落ち着かないでいた。ここまで載せてくれと言っていたあの二人組は、街が見えた途端まだ着いてもいないのに海へと飛び込んで行っちゃった。

「ようこそ!!!歓迎の街、ウィスキーピークへ!!!!」

「海賊だァ!!!」

「ようこそ、わが街へ!!」

「“偉大なる航路”へようこそ!!」

わ、わぁ…生だとこんなに凄い歓声浴びてたんだなぁ…結構凄い、猫被ってるって知ってるけど、こんな歓声、本当に心の底から思ってるみたいだ。こりゃあ普通に騙されちゃうのも分かるな。
メリー号は大勢の歓声を浴びながら街の真ん中に流れる川を進んでいく。サンジは女性からの黄色い声に機嫌を良くして、ウソップもウソップで歓声を浴びて勇敢な海の戦士を演じてる。こんな歓声、こんな私が浴びた事がある訳でもなく。露出している肩を何度も何度も摩っていた。あ、前の世界ではよく、落ち着かない時はどこか摩る癖があるって言われてたっけ。
そうこうしている内に、船は覇王樹の麓へと到着した。そこにも大勢の住人が立っていて、私たちを歓迎していた。真ん中には大きな男の人が一人立っていて、住人は脇に大勢。この男の人、王女の家来さんだったよね。ここでは敵だけど。

「いら”っ……ゴホン……マーマーマーマーマ〜〜♪いらっしゃい、私の名はイガラッポイ」

「…こ、個性的なキャラだ…!」

「なまえ、黙りなさい」

あ、あぶない!やっぱり人柄も漫画の中では結構抑えられるんだな…!素直に思った事だけど、口に出しちゃってたなんて。ごめんなさい、ええと、イガラッポイさん。……名前も名前で、生で聞くと少し笑いがこみ上げちゃう…!

「驚かれたことでしょうが、ここは酒造と音楽の盛んな街、ウィスキーピーク。もてなしはわが街の誇りなのです」

あ、良かった…さっき言ってた事あんまり聞こえてなかったみたい。この人ゾロと戦ってるとそう、強そうには見えないんだけど、私が怒らせて闘う事になったら絶対負けちゃうよ。いくら悪魔の実を食べたからって何の能力か分かんないし、勝てる訳ない!!

「自慢の酒なら海のように沢山ございます。貴方がたのここまでの冒険の話を肴に宴の席を設けさせて頂けま”ぜ、ゴホン…マーマーマ〜♪頂けませんか…!」

「「「喜んで〜〜〜〜〜〜っ!!!」」」

一人でこの人噛みすぎだし咳払いし過ぎだなぁ、なんて思っているとお誘いが来た。本当は慎重に考えるべきなんだけど、この大勢の人集りプラス大歓声には疑う心はまず勝てない。よって、ルフィ、ウソップ、サンジの3バカは後先考えずに了承を。ナミはイガラッポイさんにログがいつ溜まるのか聞いてるけど、彼ははぐらかして私達を宴が開かれる会場へと誘った。

「宴だァ!!!」

誰かのそんな一声ので、街の人たちは一斉に盛り上がり、一味もそれに比例した。ただ一人、私だけがぎこちない笑顔を浮かべる以外、何一つ変わらない楽しそうな情景だった。
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