第一部 … voyage

□“偉大なる航路”
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先程までの嵐は嘘のよう。太陽が高く登り、温かい。私達の船は、どうやら“凪の大陸”、カームベルトなるものに入ってしまったらしいのです。

“凪の大陸”。それは風一つ吹かない無風の領域。どんなに待てど暮らせど風は吹かない。しかも、プラスして、この海域には大型の海王類の巣があるとか。ふふん、ナミが男性陣に説明してる間に、私は一人で復習してました。褒めて欲しいけどこんな事言言えないからねぇ。

「ここなら、おっきな魚とか釣れそうだね」

「おっ、そうだな!釣りしてみっか!」

「何馬鹿な事言っとんじゃボケー!!」

いまいち理解していなさそうなルフィへと耳打ちすれば結構乗ってくれた。だって、海王類並の魚が釣れたら食料だってこまんないしさ。そんな私たちへとナミの拳骨が飛んできたのは三秒もみたない時。痛い。

「あのねぇ、この海には…!!」

ナミが私達に向けて口を開いたその時。ドォォオオン、なんていう地響きが船に落ちた。海へ投げ出されそうで、思わずそこら辺のものに捕まった。

“むにっ”



え?


「…おいテメェ、どこ触ってんだ」

どこって……、伸ばした自分の腕を辿うと、手の平はゾロの胸…胸筋を鷲掴んでいた。…結構弾力あるじゃんか、ロロノアさん。

「す、素敵な筋肉だね…?」

「さっさと退かせアホ!!!」

「ひえっ!!」

怒鳴るなんて、酷い!怖さの方が強くて直ぐに手を退かしたけど、もうちょっと触っていたかったのは事実。でもさ?でもさ?!ゾロだって私の胸触ったじゃん!!!怒るとか理不尽だよ!!仕返しってことにしてやる、仕返し。
なんて一人ぷりぷり怒っている間も地響きは続いていて。

「ぅ、わぁっ!!」

突然足元が持ち上がったと思ったら、真横には大きな大きな海王類の額。確か構造では今、海王類の鼻先に居るんだよね。
男性陣はオールを手に海へと漕ぎ出す準備をしている、けど…意味無いんだよね、確か、

「……ンニッ………キシっ!!」

そう、海王類のくしゃみのお陰で船は勢い良く飛ばされた。ひ、いいっ、私、私絶叫系無理って、何回思えば…っ!!!

「うぎゃああああああっ!!!」

「なまえちゃん!!」

落ちる、落ちる落ちる!!!少しずつ離れていくメリー号。私の体重とメリーとじゃ、メリーの方が重いに決まっている。結果、私は上空へと残される形になって。サンジが思い切り腕を伸ばしてくれたけど、届かなくて。分かっていたのに準備が出来てない私は、飛んだ馬鹿だ…っ!!!!
途端私の腰に何かが絡まった。もしやこれは、これは、

「なまえ〜〜〜っ!!!帰ってこぉ〜〜〜い!!」

「ひっ、ぎゃああああああ!!」

ぐん、とルフィの腕に引き寄せられて一気に下へと落ちる。ホーンテッドマンションだ!!ホーンテッドマンションだああっ!!!し、し、死んじゃう!魂口から零れるううっ!!!!
必死で口元を抑えて引き寄せられるがままになっていると、いつの間にか船は元の嵐を進んでいて、私の足は甲板へとぺったりくっついていた。

「なまえ、大丈夫だった?!」

駆け寄ってきたナミに声を掛けられるも、呆然として言葉が出ない。次の瞬間にはぺたりと尻餅をついていて。

「む、無理ぃ…」

そんな情けない言葉を最後に、ぷつりと意識は海の底のような、真っ暗な場所に吸い込まれて行った。
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