鋼の錬金術師小説置場

□Forbidden fruit
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シャリっと、採れたての林檎を口に含む。
普段はあまり甘いものは得意ではないが、
この林檎だけは食べていられる。
自然な甘みが昔から馴染んでいるのだ。


「あれー。またそんなの食べてるの?」


声をした方を見ると、見慣れた人物が立っていた。


「……うるせぇよ。ゲス野郎が」
「うわっ、ヒドっ。会って早々言うなんてさァー。もうちょい優しくなった方がいいんじゃない?グリード」
グリード「お前こそ、もうちょっと人の幸せを喜べる人間になったらどうだ?エンヴィー」


言われたコトをそのまま返すと、
言い返す言葉がないのか苦い顔をし、こちらを睨む。

このエンヴィーという人物は、部下でありパートナーでもある。
パートナーというのは、我々天使…また、天界で定められ組まれたチームのことだ。

チームそれぞれは階級によって組まれ、戦闘や知識を学ぶ。
そして、いざという時に役立てる為、それらを努力し得るのだ。


グリード「……なんの用だよ。」
エンヴィー「え?……あーそうそう。グリードにいい話があるんだった」
グリード「どうせテメーのいう"いい話"は、ロクでもねーんだろ」


エンヴィーの事だ。
最近起こった誰かの不幸の話をするのだろう。
此奴は全くのゲス野郎だ。


エンヴィー「と、思うでしょ?実はね〜、そうじゃないんだな〜〜」


ニヤニヤと口角を上げ楽しげに言う。

一体なんの"いい話"なのだろうか。


エンヴィー「……例のアレ。実行されるらしいよ」
グリード「……」
エンヴィー「迫ってきてるって噂。近いうち襲撃されるかもね〜〜」
グリード「そうか」
エンヴィー「そゆこと。んじゃ、話すこと話したから俺はこれで失礼するよ」


そう言うと、背中をこちらに向け去っていった。








……例のアレ。

それは、戦争。

天使と悪魔の戦争。



ここ数百年行われていないが、まさかこんな時期になって実行されるとは。


……だが、正直勘付いてはいた。

この重い空気と、殺気。

天界では普段感じない気配だ。






グリード「……面白くなりそうだ」





そう呟き、もう一口林檎を齧った。

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