そらもよう
□初明かり
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「陽ちゃん、ちゃんとお弁当持った?」
「ん!弁当だけは絶対に忘れないから大丈夫ー!」
「優先輩、弁当忘れてます。」
「あー!烏丸君ありがとう・・!」
「朝から騒がしいわね〜」
「うんうん、今日もみんな元気で何よりだな!」
川の真ん中にぽつんと建つ、ここ『玉狛支部』は、今朝はいつにも増して騒がしかった。
「じゃ、いってきま〜す!」
というのも、昨日は夜遅くまでみんなでパーティーをしていたので、普段は家に帰るとりまるや桐絵、栞も久しぶりに全員支部にお泊りをしていて、朝からみんな勢揃いだったせいだ。
え、なんのパーティーだって?
それはね・・・
「陽!何歩いてんの!あと20分しかないんだよ!?」
「いや、20分もあるじゃん・・・」
私より数メートル先。早足で歩いていた優は、その場で私を急かすように足踏みをしてから、再び歩き始めた。
ここから学校までは歩いて20分、走って15分。まして普段からレイジさんに鍛えられている私と優なら、本気で走れば10分で着く。
それでも根は優等生な優は、やっぱり余裕を持って学校に着きたいようだった。
「大丈夫だよ〜どうせ遅刻したってなんか減るもんじゃ無いんだし。」
「減るから!遅刻したらポイント-1000なんだよ?!」
ボーダーの隊員は、ほとんどが学生だという事で、ボーダーの幹部さんたちは、学生の本業は勉強だからって、成績が下がったり、無断遅刻や無断欠席をするとその人の個人ポイントを下げるなんていう制度を作り出しやがってくださったんですよ。
ちなみに、遅刻1回で-1000ポイント。サボりで-1500。成績は下がった分に応じてポイントが没収される。
ま、私と優なら1000でも2000でもちゃちゃっと取り返せるんだけどね〜
「ほら陽!ちゃんと走って!」
「ほいほい〜」
玉狛第一は今日は何やら極秘任務とやらがあるらしいから、見送りに来てくれたメンバーは学校はお休み。
いいなあ、なんて呟きながら、優に再び急かされたので、さてそろそろちゃんと走ろうかと鞄を背負いなおしたところで、近くでガシャン!と、何か大きくて重いものがぶつかる音が聞こえた。
普段の日常では鳴りえない音に、私は驚いて反射的に足を止める。
ネイバー・・・は警報が鳴ってないし違う。
となれば、多分事故だろう。
先を見れば、あのただ事では無い音がまさか聞こえなかったのか、スタスタと走っていく優の後ろ姿がどんどん遠くなる。
私はその姿をぼうっと眺めながら、音が聞こえた方へと進行方向を変えた。