短編
□私とバレンタインデー
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夢主しか出てきません。ご注意ください。
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朝、起きたら。
「うわっ。」
花が降ってきた。
ふと、目を覚ましたのがさっきのこと。私はボーとする頭で枕元の携帯を見た。時刻は午前6時。そろそろ起きようか。
少しだけ肌寒いので寝転んだまま、掛け布団の上に脱いで置いていた羽織を勢いよく引き寄せた。するとなにかが顔の上に降ってくる。虫かと焦ったが、何やら違うらしい。ふわりといい香りが鼻をかすめた。
「……花?」
花だ。白くて可愛らしい花。
なんでまた花なんか。私は身体を起こし、辺りをきょろきょろと見渡した。
まだ薄暗いけど、床に何かが散らばっていることだけは確認できる。起き上がって電気をつけると、はじめに見た花が床のそこら中に散らばっていた。
「……え、なんで。」
純粋な疑問が口から出た。
とりあえず散らかしておく訳にもいかないので、一つ一つを束ねていきながらリビングに出る。そこも予想どうり、花が散乱していた。
どれも萎れていなくて綺麗な花だ。
きっとここに置かれたのはついさっきといったところだろう。不法侵入という点ではもう突っ込まない。私の家のセキュリティは知り合い全員にとっては無いに等しいらしい。
全てを拾い終わって、私は花を花瓶にさすことにした。かなりの量だから、リビングと玄関、二箇所に分けて置こうか。
それにしても、いったい誰が何の為に……。
「あ。」
花瓶を置いてある棚に、一つのカードが置いてある。
バレンタインデーと書かれた市販のカードに、付け足すように「いつものお礼」と書かれている。この筆跡で短い文を書く人物を私は一人しか知らない。
にやける口を隠さず、私は電話をかけることにした。
電話越しでも分かるくらい、あの人がうんざりするくらい、いっぱいいっぱいお礼を言おう。