短編

□イルミさんと添い寝
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今日はゾルディック家にお泊まりすることになっていた。
キルア君とミルキ君とお菓子を食べながらゲームをして気付けば深夜。最後にミルキ君オススメの幽霊が出てくるホラー映画を見てお開きとなった。

客室に戻り、寝る準備を済ませてベッドに潜るがなかなか寝付けない。
それどころか変な幻覚が見えてきた。
さっき、洗面所で歯ブラシをするときは後ろに何かいるような気がするし、トイレを出るときも何かいたような気がしたし、部屋の角にも何かいるような気がした。ついでに天井にも何かいたような気がした。

私は恐る恐る布団から顔を出す。すると顔に何かがかかった。真上には黒い目が私をジッと捉えている。あ、顔にかかってるやつって髪かー。

「ぅ、うわぁあああっ!」
「うるさい。それにしても叫び声すら色気がないね。」
「え、あ……イルミ、さん?」
「オレ以外に何だと思ったの。目、大丈夫?」
「だ、大丈夫です。なんでここに。」
「明日の仕事に付き合って欲しくてさ。オレ、明日はゆっくり寝るつもりだし今言っとこうと思って。」
「了解です、いけます。」
「そ。じゃ、俺も寝るから。おやすみ。」

覗き込む体勢から身体を起こしたイルミさんは、踵を返した。私は思わず彼の服の裾を掴んでしまう。
イルミさんは顔だけをこちらに向けて、ぱちぱちと瞬きした。

「なに。」
「誠に申し訳ないのですが。」

私は意を決して口を開く。

「一緒に寝ていただけませんか。」
「……は?」
「ミルキ君たちとホラー映画見てたんですが、怖くて寝られません!」

初めはミルキ君に添い寝してもらおうかと考えた。しかし却下されるのは目に見えている。
キルア君に頼んだら一生、このネタでいじられそうだし、カルトちゃんはもう寝ているだろうから起こすのは申し訳ない。
でもイルミさんなら、なんだかうまく言えないけど色々大丈夫な気がした!

「嫌。今日疲れてるから、一人でゆっくり寝たい。」
「お金払いますから!」
「いいよ。」

なんだか、彼と関わってると世の中金次第ってことをつくづく思い知らされます。

ベッドに入ってきたイルミさんに、私は背を向けて横になった。よし、これなら背後をおばけに取られる心配もない。
胸はどきどきするが、今回のこれは確実に恐怖からの動悸だ。

「リヒト、お化けなんか怖かったんだ。」
「お化け、というか幽霊が駄目です。」
「別に変わらないでしょ。」
「変わります! だってあいつら、攻撃できないし殺せないじゃないですか。」
「……ああ。」

イルミさんは納得した、というような声を出した。お分かりいただけたようでよかった。
安心したら急に眠気が襲ってきたので、素直にその微睡みに身をまかせる。

何故か背中が温かくて、腰の位置に何かが乗っかっているような気がしたが、もうこの際気にしないことにした。

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