短編

□イルミさんはお兄ちゃん
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食事の時

「リヒト、口元にソースついてる。」
「ぅえっ⁉ すみません!」
「じっとしてて。」


寒い時

「は、ハクションッ!」
「はいティッシュ。」
「ありがとうございます。」
「あとこれ、巻いといて。」
「……ありがとうございます。」


そして今日

「何読んでるの?」
「人魚姫です。偶に読み返したくなって。」
「ふーん、読んであげようか。」
「……。」

今まで沢山のお世話を受けてきた。その度につっこまなかった私を褒めていただきたい。
しかし今日こそは言わせてもらう。私は静かに本を閉じて、イルミさんと向かい合った。

「イルミさん、私はあなたの何ですか!」
「……急になに。」

今日はとことん話し合いましょう。
首を傾げたって無駄ですよ。可愛いですけれども!

「答えてください。」
「ビジネスパートナーじゃないの?」
「……イルミさん。あなたはヒソカにも口にソースがついてたら拭ったり、寒いときは自分のマフラーを相手に巻いたり、今みたいに読み聞かせをするんですか⁉」
「は?するわけないじゃん。気持ち悪い。」

イルミさんの顔が今までにないくらい嫌悪感溢れるものに変わる。そうですよね! 私も自分で言ってて鳥肌が立ちました。

「そうです。普通はビジネスパートナーにそんなことはしません。勿論、私もビジネスパートナーです。」
「リヒトは別にいいんじゃない? ヒソカだから気持ち悪いんだし。」
「……あれ、ほんとだ。」

私の立場をヒソカに置き換えるとびっくりするほど変態度が増す。ん? ビジネスパートナーだから気持ち悪いんじゃなくてヒソカだから気持ち悪い? いや、そもそもビジネスパートナーってなんだっけ。ビジネスパートナー使いすぎてよく分かんなくなってきた。

「リヒトはさ、オレに甘やかされるの嫌?」
「い、嫌ではないのですが。今まで他人にここまでされたことがないのでムズムズします……。」
「嫌じゃないならいいよね。今までキルたちにやってたことしてるだけだし。」

私の側にあった本を取り、読み聞かせを始めたイルミさんの声をどこか遠くで聞きながら、私はハッとした。

あ、これビジネスパートナーじゃない。兄妹だ。

下に四人の弟をもつイルミさん。弟たちが兄離れした後も、その長男気質は健在らしい。

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