短編
□イルミさんとポッキーゲーム
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世の中にはポッキーゲームなるものがあるらしい。細い棒状のチョコがかかったお菓子を端から食べていくというゲームだ。
「イールミさん。」
そして今日はポッキーの日。
今回はこの日に因んでポッキーゲームをしてみようと思う。
恥ずかしさは多少はあるが、今は好奇心と暇が相まってなんでもできそうな気がしてくる。
つまりおかしなテンションになっている。
イルミさんは部屋で針を磨いていた。
彼が今日はオフなのは調査済みである。イルミさんは針を磨く手を止めて、くるりと振り向いた。
「なに?」
「ポッキーゲームしませんか。」
「……確か、一つのお菓子を二人で食べていくやつだっけ。」
「はい! なにやら今日はポッキーの日、というらしいです。」
にこにこ笑う私に対して、彼はふーんとあまり興味なさげな声をもらす。
イルミさんは椅子から立ち上がると、静かにこちらに向かってきた。
「これ、くわえればいいの?」
「はぃ、っ?」
私が持っていた箱から一本のポッキーを取り出すと、イルミさんは私の口にそれを突っ込んできた。既にポッキーの半分は私の口の中に埋まっている。
驚く暇もなく、彼はポッキーの端から真ん中までを一気にくわえた。
「……っ⁉」
!!!?
「これでいいんでしょ。」
「……ぇ。」
く、唇になにか柔らかいものが……っ⁉
「そんな遠回しなことしなくてもキスぐらいいくらでもしてあげる。」
「ぇ、あ……ぁ、あり、がとうございます?」
頭はまだパニック状態。
なにが起こったか理解できなかったが、口の中は甘かった。