短編

□イルミさんと生理
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痛い、無理、痛い。
気分は最悪、体調も最悪。私はベッドの上で屍と化していた。
ああ、もうこのまま無機物になりたい。布団と一体化したい。女の子の身体というものはなぜこうも月に約7日、厄介なものがくるのか。

気分が沈む。腰が重い。下腹部がズキズキと痛む。立ってられない。
目の前に人影があったって驚く気力すら残ってないのだ。

「仕事持ってきたんだけど。なに、こんな真っ昼間に寝てるの?いいご身分だね。」
「……すみません、イルミさん。」

今日ばかりはお引き取り願えないだろうか。
黒い目が私を見下ろしている。冷たい視線にちょっとだけ、ときめいてしまうのは色々と末期なのかもしれない。

「……リヒト、どこか怪我でもした?」
「いえ、どこも。」
「へー、じゃあ生理?」
「っ!?」

あのイルミさんの口から生理という言葉を聞く日がくるなんて!
というか知ってたんですね。男兄弟ですし、世間離れしてますから知ってるとは思いませんでした!

驚愕の心情を隠し平静を装う。イルミさんは目をぱちくりさせた。

「あ、当たり?」
「……ハイ。」
「部屋入ったとき、血液っぽい匂いがしたからさ。じゃあ今、辛いの?」
「……はい。なので、なんのお構いもできませんので今日はお引き取りくださぁああっ!!?」
「辛いわりに元気だね。」
「いやいやいや!それは可笑しいです。驚きもしますよ!なんでベッドに入ってきてるんです!?誰です、誰に仕込まれました!?ヒソカ?ヒソカですね。一度しめてきまっ」
「うるさい。ちょっと黙って。」

少し起き上がった身体に頭から布団を被せられ、そのままベッドへ戻される。
何故、イルミさんがベッドへ入ってきているのか。何故、抱きしめられているのか。
思考が追いつかない。

シングルよりも少し大きめのベッドだが、イルミさんが入ればぎゅうぎゅう詰めで狭い。
布団からなんとか顔を出し、後ろを振り向けばイルミさんと目があった。

「ヒソカじゃなくて母さん。痛みがひどいときはこうされると楽になるんだって。」

……それは、キキョウさんも生理痛が酷いときはシルバさんに抱きしめてもらっていると?
ごちそうさまです。夫婦仲が良さそうでなによりです。

「ましになった?」
「すみません、今はなんとも……。」

そんなすぐにはよくならない。
でも不思議だ。もっと緊張するかと思っていたのに、以外と安心できる。人肌が心地よくて、少しうとうとしてきた。

「寝てもいいよ。」
「でも、仕事」
「そんな状態で話聞かれても迷惑。」
「……じゃあ、少し寝ますね。」

頭がボーっとしてくる。実は痛みであまり休めていなかった。ああ、やっと眠れそうだ。

「ありがとうございます。」

眠りに落ちるまで短い間ではあったが、労わるように下腹部に当てられた手に優しさを感じた。

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