短編
□マチちゃんとトラブルメーカー
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「マチちゃーん。」
「……なに。」
「アハッ、またやっちゃった。」
ひょっこりと壁から顔だけを出したリヒトがおずおずと姿を現わす。
ボロボロの服を見て、あたしはため息をついた。
「今度は何やったの。」
「えっと……木の枝に引っかかったり、ヒソカにトランプ投げられたり、通り魔に切られたり、転んだり、フェイタンをちょーっとだけ怒らせちゃったり。」
「アンタ、何かに呪われてるんじゃないの?」
「うーむ、そんなはずは……。」
リヒトはいつもボロボロの姿であたしの前に現れる。良いときは服だけ、悪いときは全身傷だらけで。
どうやったらそんなにトラブルを引き寄せられるんだか。疫病神でもついてるんじゃないの。
「ほら、こっち来な。縫ってあげる。」
「ありがとう!」
こんなゆるい感じのやつだから、いつかどこかで野垂れ死ぬんじゃないかって少し心配してる。けどこいつは、そんなあたしの心境なんか知りもしないでバカみたいにニコニコ笑って。
「……ほんと、いい加減にしな。」
「ぁ、やっぱり縫うの嫌だった?」
「そうじゃなくて、もう少し危機感を持てって言ってんの。」
嫌なら本当に、こいつなんか放っておくし。一つ縫うにも有料にしてる。本当に、こいつは人の気も知らないで。
「えへへ。」
「なに笑ってるの。」
「心配してくれて、ありがとね。」
「……バカじゃないの。」
軽く、リヒトの頭を叩く。
それでも緩く笑うこいつを見ていると、怒るのも疲れてきた。
「今度からはもう少し気をつけなさいよ。」
「はーい。」
こんなトラブルばっかりのヤツだけど、あたしはこのリヒトという人間が嫌いじゃない。
こんなのでも嫌いじゃないなんて、あたしも大概のバカだ。