暗殺少女

□第13話
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皆が校庭に集まると、殺せんせーはサッカーゴールをどかしていた。


「何するつもりだよ殺せんせー」

「ゴールとかどけたりして」

「イリーナ先生、プロの殺し屋として伺いますが」


殺せんせーはゴールを運んだあと、くるりと方向転換してイリーナ先生の方を見て聞いた。


「……何よいきなり」

「あなたはいつも仕事をする時…
用意するプランは1つですか?」

「……?
…いいえ。本命のプランなんて思った通り行く事の方が少ないわ

不測の事態に備えて…予備のプランをより綿密に作っておくのが暗殺の基本よ

ま、あんたの場合規格外すぎて予備プランが全部狂ったけど…見てらっしゃい次こそ必ず「無理ですねぇ。では次に烏間先生」


悔しがっているイリーナ先生をよそに、今度は烏間先生の方を向いた。


「ナイフ術を生徒に教える時…重要なのは第一撃だけですか?」

「…………第一撃はもちろん重要だが、次の動きも大切だ

強敵相手では第一撃は高確率でかわされる
その後の第二撃、第三撃を…

いかに高精度で繰り出すかが勝敗を分ける」

「結局何が言いたいん……「先生方のおっしゃるように、自身を持てる次の手があるから自信に満ちた暗殺者になれる…
対して君達はどうでしょう」


殺せんせーはくるくると回り出した。

少しずつ加速していく。


「「俺等には暗殺があるからそれでいいや」…と考えて勉強の目標を低くしている
それは、劣等感の原因から目を背けているだけです

もし先生がこの教室から逃げ去ったら?
もし他の殺し屋が先に先生を殺したら?」


殺せんせーは竜巻のように回っている。

私達の周りには突風が吹き始めた。


「暗殺という拠り所を失った君達には、E組の劣等感しか残らない

そんな危うい君達に…先生からの警告です」



────第二の刃を持たざる者は…
暗殺者を名乗る資格かし!!


そして今度こそ、校庭で巨大な竜巻が起こった。

……と、飛ばされそう!!


しかし、すぐに竜巻は止んだ。


「……校庭に雑草や凸凹が多かったのでね
少し手入れしておきました」


「「「「!!!」」」」


見ると、校庭はとても綺麗に整地されていた。


「先生は地球を消せる超生物。この一帯を平らにするなどたやすい事です

もしも君達が自身を持てる第二の刃を示せなければ
相手に価する暗殺者はこの教室にはいないと見なし

校舎ごと平らにして先生は去ります」


……!?

こ、殺せんせーが去るって…そんな…。


「第二の刃…いつまでに?」

「決まっています明日です

明日の中間テストクラス全員50位以内を取りなさい」

「「「!!?」」」


平然とそんな事を言う殺せんせーに、クラスの皆が驚愕している。


「君達の第二の刃は先生が既に育てています
本校舎の教師達に劣るほど…先生はトロい教え方をしていません

自信を持ってその刃を振るって来なさい
ミッションを成功させ、恥じる事なく笑顔で胸を張るのです

自分達が暗殺者であり…

E組である事に!!」


「……!!」


殺せんせーは、本当にステキな先生だ。

私はこの先生の期待に応えたい。

私の願いを聞いてくれた先生の期待に。

私は、拳を握りしめた。
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