暗殺少女

□第17話
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「遅くなってすみません、この場所は君達に任せて…
他の場所からしらみ潰しに探してたので」

「…で、何その黒子みたいな顔隠しは」

「暴力沙汰ですので…この顔が暴力教師と覚えられるのが怖いのです」


殺せんせーの弱点I
世間体を気にする


「渚君がしおりを持っていてくれたから…先生にも迅速に連絡できたのです
この機会に全員ちゃんと持ちましょう」


そう言って殺せんせーは、皆にしおりを手渡した。


「……せ、先公だとォ!?
ふざけんな!!ナメたカッコしやがって!!」


そう言った不良達は一斉に殺せんせーに飛びかかった。


「ふざけるな?」


しかし、誰の攻撃も殺せんせーには届かず、何をされたのかもわからずに床に倒れていくのだった。


「それは先生のセリフです
ハエが止まるようなスピードと汚い手で…
うちの生徒に触れるなどふざけるんじゃない」

「…ケ、エリート共は先公まで特別製かよ」


リーダーの不良は震える脚を支え、なんとか立ち上がった。


「テメーも肩書で見下してんだろ?
バカ高校も思ってナメやがって」


そう言うと胸ポケットからナイフを取り出した。


「エリートではありませんよ

確かに彼等は名門校の生徒ですが、学校内では落ちこぼれ呼ばわりされ、クラスの名前は差別の対象になっています

ですが、彼等はそこで様々な事に実に前向きに取り組んでいます
君達のように他人を水の底に引っ張るようなマネはしません

学校や肩書など関係ない
清流に棲もうがドブ川に棲もうが、前に泳げば魚は美しく育つのです」


「…………!!」


その言葉を聞いた神崎は顔を上げた。


「…さて、私の生徒達よ
彼等を手入れしてあげましょう

修学旅行の基礎知識を体に教えてあげるのです」


殺せんせーのその合図で、不良達の背後に立った4人が振り上げた鈍器(しおり)で思い切り殴りつけた。



......................................................


「あ、アーニャ…目が覚めたんだね」

「う、うん…カルマ君…助けに来てくれてありが……でぇ!?」


私は目がとび出んばかりに驚いた。

だってだって、何故かカルマ君におんぶされているんですよ!?
重くないの!?重いよね!?

ていうか、なんで私カルマ君におんぶされてるの!?!?!?


「ははっ、ホント面白いよねアーニャって」


ほら、前見なよ。とカルマ君に言われて前を見ると、殺せんせーと皆が話しながら歩いていた。


「そっか、私気絶して…」

「そうそう、一瞬心臓止まるかと思ったよ」

「そ、そんな…心臓が止まるだなんて…」

「茅野ちゃんから聞いたよ、庇ったんだったね」


カルマ君は驚いて少し体制を崩した私をまたおぶり直し言った。


「う、うん…だけど、咄嗟に体が動いちゃっただけだから、その後は何も出来なくて…」

「俺、前に言ったよね?無茶しないでって」

「……うん…ご、こめん…なさい…」

「………」


カルマ君との間にしばらく沈黙が流れる。

前の方では、皆が笑いあって話している。


「か、カルマく「もし…」…え?」

「もしも、俺等が間に合ってなかったら、アーニャは大変なことになってかもしれない」


カルマ君は少し低めの声で言った。

けれど、すぐさまいつもの声に戻る。


「もう俺に心配かけないでね」

「……!う、うん!!」


(ちょっとだけ…ほんの少しだけ、カルマ君に触れることを許してください)

私は、そう思ってカルマ君に少しだけ寄り添った。






────今だけ、特別。

いつもより少しだけ勇気を出したから、特別。

ほんの少しだけカルマ君に甘えてしまおう。

今この瞬間ぐらいなら、許されるはずだ。



「……」


カルマは、アーニャが自分の背中に寄り添ったのを感じ、おぶる腕に少しだけ力を込める。

(アーニャだけは、どんな事があっても絶対に守る…今度こそ、泣かせたりなんかしない)

彼は一人、心に誓うのだった。
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