暗殺少女
□第17話
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「なんか、いい話してんだけどよォ…
肩書なんてンなもん死ね!って俺等も思ってんだ
エリートぶってる奴等を台無しにしてよ
…なんてーか、自然体に戻してやる?みたいな
いいスーツ着てるサラリーマンには…女使って痴漢の罪を着せてやったし、勝ち組みてーな強そうな女には…
こんなふうにさらってよ、心と体に二度と消えない傷を刻んだり
俺等そういうあそび沢山してきたからよ、台無しの伝道師って呼んでくれよ」
…バカなのでしょうか、この人達は。
バカなんですね、きっと。
そんなことを言えばきっと逆上されちゃうから言えないけど…。
「…さいってー」
ボソッと呟いたカエデちゃん言葉を聞くと、リーダーは一瞬覚めた表情になり、直ぐにカエデちゃんの首を絞めた。
「!?っ」
「何エリート気取りで見下してんだあァ!?」
…だめだ、もう見ていられない。
「ガッ…!」
気づいたら、私は男の背中を蹴っていた。
「テメー、このアマ…そうか、自分が相手されなくて寂しいか」
私の狙い通り、男はカエデちゃんから手を離して私の方を向いた。
「おい、抑えろ」
その言葉で、他の不良達が私を床に押さえつけた。
「…ハーフみてぇだから最後までとっておこうと思ってたけどな…おまえから堕としてやるよ」
男は唇を舐めた。
…だめだ。また恐怖が戻ってきた。
体に力が入らない。
まさか、こんな形で…好きな人にもまだ何も伝えてないのに…
それでも、助けが来るまでの時間稼ぎだ。
私が頑張れば、注意を向ければ、きっと2人は何もされずに済む。
…大丈夫。大丈夫。
私は目を閉じて覚悟を決めた。
男の手がブレザーに伸びる。
その時だった。
扉が開いたのだ。
「お、来た来た」
男の手はブレザーに伸びたままそちらを見た。
「うちの撮影スタッフがご到着だぜ……!?」
が、入ってきた男は顔をボコボコに殴られ意識を失っていた。
リーダーは私のブレザーから手を離した。
他の不良達も警戒して戦闘態勢をとる。
「修学旅行のしおり1243ページ、班員が何者かに拉致られた時の対処法」
…あ、渚君の声だ。
涙が溢れそうになった。
「犯人の手がかりが無い場合、まず会話の内容や訛りなどから地元の者かそうでないかを判断しましょう
地元民ではなく更に学生服を着ていた場合→1244ページ」
そう言って渚君はしおりのページを捲る。
……来てくれたんだ。
「考えられるのは相手も修学旅行生で、旅先でオイタをする輩です」
「皆!!」
カエデちゃんの声が響く。
「迎えに来たよ、アーニャ」
カルマ君の優しい声を聞くと、暖かいものが頬を伝った。
本当に、彼は私の王子様のようだ。
いつだって助けてくれる、困った時は手を差し伸べてくれる。
こうして、ピンチの時には助けに来てくれる…。
(やっぱり…大好きだなぁ…)
私はカルマ君に満面の笑みを向けた。
「……!?」
(え、照れた!?!?)
渚は、カルマの一瞬の表情を見逃さなかった。
だが、アーニャの方は全く気づいていないようだった。
「て、てめぇらなんでココがわかった…!?」
リーダーが焦った表情で言う。
「土地勘のないその手の輩は拉致した後そう遠くへは逃げない
近場で人目につかない場所を探すでしょう
その場合は→付録134へ」
そして渚君はそのページを開いてこちら側へ見せた。
「先生がマッハ20で下見した…
拉致実行犯潜伏対策マップが役立つでしょう」
「……!!」
有希子ちゃんも笑顔になる。
…よかった。2人とも無事で…
「すごいなこの修学旅行のしおり!
カンペキな拉致対策だ!!」
「いやーやっぱ修学旅行のしおりは持っとくべきだわ」
「「「……」」」
((ねーよそんなしおり!!))
不良達は盛り上がる渚達を見て、そんなことを思うのだった。
「…で、どーすんの?お兄さん等」
カルマ君の声が先程の優しい声と打って変わってとても低い声になった。
「こんだけの事してくれたんだ
あんた等の修学旅行はこの後全部入院だよ」
「……フン、中学生がイキんな」
リーダーがそう言うと、外から殴る音が聞こえてきた。
「呼んどいたツレ共だ
これでこっちは10人、おまえらみたいな良い子ちゃんはな見た事も無い不良共だ」
そう言ってゆっくりと開いた扉から出てきたのは坊主に瓶底メガネの絵に書いたような真面目な生徒だった。
「不良などいませんねぇ
先生が全員手入れしてしまったので」
「殺せんせー!!」
「せんせ…よか、った…」
「アーニャ!?」
渚君のその言葉を聞いて安心したのか私は、静かに意識を手放した。