鬼狩少女
□第4話
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「おい、その太刀見せろ」
家に着いて座ると、突然そんな事を言われた
「は、はい…」
月下は一瞬躊躇ったが、直ぐに太刀を差し出した
「ん…確かにあいつの物だ…」
布を取り、太刀を眺めた貞時は、それを終い月下に返した
「あの…父とのご関係は…」
「……あいつとは、古くからの友人だった
お前の母さん…華絵さんが鬼なのも知っている」
「……やっぱり…母は、鬼だったんですね…」
「聞かされていなかったのか?」
「……はい…けれど、母も父も、きっとわかっていたと思います…私が母の事を鬼だと勘づいていると…」
月下は、「この眼があるから…」と言いながら布を取った
「……不思議な目だな…そんな目をした奴は初めて見た…」
貞時は感嘆を漏らした
「“気”が見えるんです、鬼と人…悪人と善人…魑魅魍魎だって…」
「そうか…ただ目が見えないのだと思っていたが、そうではないんだな
それは、華絵さんから貰ったのか?」
「はい…」
月下はまた布を巻きながら答えた
「他には…何か、特異な脳力はあるのか?」
「怪我の治りが速いです」
そう言って月下は足を見せた
血はこびり付いているものの、傷等は一切無かった
「……なるほどな…この世には特異な能力を持つものがいるという事は知っていたが…こうして見てみると、普通の子供と変わらないんだな」
顎に手を置き不思議そうにこちらを見る貞時に、月下は少し笑いそうになってしまった
何せ、彼の表情は先程から全く変わっていないにも関わらず、言葉は巧みに表情を変えているのだから
「……お前は鬼殺隊に入りたいと思うか?」
「はい」
「入ったらどうする」
「困っている人々を救います。鬼のいない平和な世にします」
布越しでも伝わってくるような決意を込めた視線に、貞時は一瞬溜め息をついた
「鬼殺隊になるには、藤襲山で行われる“最終選別”で生き残る必要がある…」
「最終選別…」
「ああ…俺は二年ほど前から“育て”となり、剣士を育てている…十六だ」
「へ?」
突然言われた数字に、月下は首を傾げる
「お前が十六になったら、最終選別へ向かってもらう
それまで、織夜に教えて貰ったことや、それ以外で足りない所は俺が指導する
…俺は織夜のように優しくないし、そうする事も出来ない
それでも、俺の元で修行するか…?」
貞時の問いかけに、月下は固く頷いた
「よろしくお願いします…師匠」
「……師匠はやめてくれ…俺にそう呼ばれる資格はない」
「……ごめんなさい…えっと、火吉さん…」
「そうだ、それでいい」
貞時は頷くと、「先ずは腹ごしらえだ」と言って鍋の用意を始めた