鬼狩少女

□第1話
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「なあ、月下…」

「どうしたの?お父さん」


娘が刀を振っている様子を縁側で見ていた父は、彼女に問いかけた


「お前は強くなったら…力を手に入れたらどうする?」

「うーん…どうしようかな」


父、織夜の話を聞いているのか聞いていないのか、よく分からない素振りを見せた月下は、刀を振る腕を止めなかった


「お前はその力を、誰かを守るために使うのか…それとも…」
「あなた」


それでも尚、話を続ける織夜に、鈴を鳴らしたような美しい声で母の華絵が制止した


「別にいいじゃない…この子の人生なんだもの、私達が兎や角言う事ではないわ」


そう言って笑顔で月下に「ねー」と同意を求める

すると、月下は突然刀を鞘に納め、部屋の奥で布団から体を起こしてこちらを見ていた華絵の元へ駆け寄った


「お母さんは、私にどうして欲しい…?」

「え……?」


突然の問いかけに、彼女は長く美しいまつ毛を上下させた


「…ねえ、月下…?」


彼女は一瞬の沈黙の後、手を伸ばして月下の細い髪の毛をさらさらと撫でながら言う


「さっきも言ったけれど、これは月下の人生だもの、貴方が自分の道を自分で決めなければ行けないわ…」


一呼吸置くと、彼女は織夜と目を見合わせてから月下の頬を撫で微笑んだ


「けれど…私は、何処かへ嫁いで幸せな家庭を築いて欲しいの…戦いとは無縁の、幸せな暮らしをして欲しい…」

「お母さん…」

「父さんも同じ気持ちだぞ!!」


ニカッと笑顔で傍に来た織夜が、二人を抱きしめた


「お前は、父さんと母さんが愛するたった一人の娘だ…
危険な事は、して欲しくないんだ…」

「お父さん…」


三人はしばし抱き合っていたが、突然鴉が飛んできた事により、織夜の顔色は一変した

彼はその鴉から何か報告のようなものを受け、すぐさま支度を始める


「お父さん…また、お仕事…?」

「ああ…」


彼は月下の小さな頭を撫で、華絵の額に軽くキスをすると、鴉と共に家を出て行った


「お母さん」

「なあに?」


華絵には、織夜を見送っている月下の表情を伺う事は出来なかったが、それでも時分の愛娘である月下の言いたい事はすぐに分かった


「私、鬼殺隊に入りたい」
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