鬼狩少女

□第2話
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「ねえ、お母さん…私、お母さんの瞳大好きだよ」

「あら?どうしたの…急に」


縁側で笛を吹いていた月下に突然そんな事を言われた華絵は、照れながらもこちらを振り向いて笑顔でそんな事を言う月下を見た

月下は、自分の母親の赤、紫、黄が混ざったような不思議な瞳を見る

まるで、朝焼けのようなその瞳は優しく彼女を見つめていた



「なんだか、包まれているような気持ちになるの
不思議だね…」

「月下…私だって、貴方の瞳は大好きよ?
……久しぶりに、見せてくれないかしら…?」

「うん!」



月下は華絵の問い掛けに、笑顔で頷き、彼女に駆け寄った

そのまま布を捲ろうとしたが、華絵はそれをやんわりと止め、布に触れた

そして、そっと布を捲った

そこにはどこまでも澄み渡った、透明のような、虹色のような、不思議な瞳があった


「貴方の瞳は、人を惹き付けるわね」

「そう?私はお母さんの方が魅力があると思うけど…」

「お母さんはもう惹き付けなくてもいいんだけどね…」


そう言って華絵は優雅に微笑んだ


「お母さんにはお父さんと月下がいるから…」

「おか…「ただいまー」…あ!お父さん帰ってきた!」

「月下、笛練習したの、お父さんに聞かせてあげよっか!」

「うん!」


元気に頷く月下に、華絵は彼女が父の元へ走っていくのを見守っていた


「…月下」


朝焼け色の瞳が悲しげに曇った


「きっとこの先、貴方は苦しい道を進むでしょう…
でも大丈夫。その時はきっと、貴方の手を引いて導いてくれる人が現れるから…」


そう呟くと、華絵は愛する夫と娘が仲良くこちらに来るのを見ていた


「お父さん、お父さん!」

「ん?どうした?」

「お父さんがお仕事行ってる間にね、お母さんにまた笛を教えて貰ったんだよ!
前よりももっと上手く吹けるようになったから聴いてて!」

「おっ!凄いじゃないかー!楽しみだな」


そう言って華絵に向かって優しく微笑んだ織夜は、月下に手を引かれ縁側へと歩いて行った



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「─────~♪」

「おお…」


月下が演奏を終えた後、それを聴いていた織夜と華絵は盛大に拍手をした


「凄いじゃないか!前よりもうんと上手くなってる!」

「えへへ…」


月下は少しばかり頬を赤らめ毛先を弄った

そして、真剣な顔つきになる



「お父さん、私ね…」

「……鬼殺隊に、なりたいんだな…」

「…うん、ごめんなさい
お父さんとお母さんは、私に平和に暮らして欲しいって思ってくれてたのに…」


下を向く月下に、織夜は近付き抱き締めた


「今でもそう思っているさ…でも、お前が決めたのならその道に進みなさい
お前の眼でも、未来は見えない…だったら…」


織夜は、月下からそっと体を離すと優しく肩を掴んだ


「今を全力で生きなさい」

「…はい!」

「ようし!そうと決まればこれからは我が家に伝わる殿下の呼吸法を覚えてもらうぞ!」

「うん!」

「もう、貴方ったら…先代なんていないでしょう…?」


華絵はカラカラと笑った

そう。始めて虚の呼吸を会得したのはこの男、虚舟織夜なのだ


「父さんの修行は厳しいぞっ?」

「私、頑張る!!」

「お母さんも相手してくれないと寂しいな〜?」


月下を揶揄う織夜に意気込む月下を見て、華絵はそんな事を言った


「もちろん!笛ももっともーっと上手くなって、お母さんに沢山聴いてもらうから!!」



月下はそう言って庭先でくるりと一回転した後、手を後ろに組みはにかみながら言った


「お父さん、お母さん…私、きっと立派な隊士になってみせるから!」


二人は、そんな月下を見て、愛おしそうに微笑むのだった
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