鬼狩少女

□第7話
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「狐小僧 今は 明治何年だ」

(……!?鬼と話してる…?)


月下は、鬼の動きが止まっている今がチャンスだと思い、一歩踏み込んだが、鬼が少年に何か問い掛けたので急いで身を隠した


「…今は大正時代だ」

「アァアアアア 年号がァ!!年号が変わっている!!」


突如喚き出した鬼に、皆が訳の分からないと言った表情をしている


「まただ!!また!!
俺がこんな所に閉じ込められている間に…
アァアアァ 許さん、許さんんん!!」


鬼は自分の頭を包み込むように生える無数の手をギギギと動かす


「鱗滝め鱗滝め鱗滝め鱗滝!!!」

「どうして鱗滝さんを……」

「知ってるさァ!!俺を捕まえたのは鱗滝だからなァ

忘れもしない四十七年前、アイツが鬼狩りをしていた頃だ
江戸時代…慶応の頃だった」

(江戸時代…!?)

「嘘だ!!」


鬼の言葉に驚く月下だったが、赤髪の少年の後ろにいた少年の叫び声を聞いて気を引き締める


「そんなに長く生きてる鬼はここにはいないはずだ
ここには人を二、三人喰った鬼しか入れてないんだ

選別で斬られるのと鬼は共喰いするから、それで…」

「でも俺はずっと生き残ってる藤の花の牢獄で
五十人は喰ったなぁガキ共を」

(五十人…確か、鬼の強さは喰った人の数で決まるって火吉さんが言ってた…)


月下は気に集中する為に布を取り首にふわりと巻いた


(……!…こんな鬼の気…初めて見た…)


彼女が驚愕するのもそのはず、そもそも彼女は先程の鬼が初めて見た鬼だった
先程の鬼は、シンプル鬼と見分けられる程度の気で、この大きな鬼のような寒気がするほどの気では無かったのだ


(子供の霊が…あれは…赤髪の男の子と同じ掘り方のお面を付けた子…)


月下は、大きな鬼の背後に女の子と男の子の霊が憑いてるのを見た

男の子はお面で顔を覆っている為、表情を見る事は出来ないが、女の子はどこか悲しそうな顔つきで赤髪の少年を見つめていた


「十二…十三で お前で十四だ」

「!?何の話だ」

「俺が喰った鱗滝の弟子の数だよ
アイツの弟子はみんな殺してやるって決めてるんだ」

「…」


鬼の答えに、月下は柄を握る力を強めた


「そうだなァ特に印象に残っているのは二人だな、あの二人
珍しい毛色のガキだったな1番強かった
宍色の髪をしてた口に傷がある」

(!?…それって後ろの…)

「もう一人は花柄の着物で女のガキだった
小さいし力も無かったが すばしっこかった」


それを聞いた赤髪の少年は目を見開く

(後ろの二人の霊と一致する…そうか、あの鬼が殺したんだ)

「目印なんだよ その狐の面がな 鱗滝が彫った面の木目を俺は覚えてる
アイツがつけてた天狗の面と同じ彫り方
“厄除の面”と言ったか?
それをつけてるせいでみんな喰われた

みんな俺の腹の中だ
鱗滝が殺したようなもんだ」


少年の息が上がっていく


「フフッフフフフッ これを言った時、女のガキは泣いて怒ってたなァ
フフフフッ

その後すぐ動きがガタガタになったからな
フフフフフフッ
手足を引きちぎってそれから」


鬼がそこまで言った瞬間、少年は瞬く間に鬼との距離を詰め、無数の手を切り刻んだ


(いけない!呼吸が乱れてる…!このままだと危ない…!)


そう思い、自分も出ていこうとした月下だったが、一歩を躊躇う


(…いいの?これは彼の戦いなんだ…彼が勝たなきゃ…駄目なんだ!!)


そう、これは彼の戦いなのだ

仲間の思いを背負った彼が、この鬼を倒さなければならない


(私には、この戦いの邪魔なんて出来ない…)


自分の出番は無いと考えた月下だったが、太刀を鞘に仕舞おうとした時、彼が鬼の攻撃をくらって木に打ち付けられ気を失ったのをみて手を止めた
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