暗殺少女

□第4話
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いっちに〜さ〜んし

ご〜ろっくしっちはっち


生徒達の声が山に響く


「晴れた午後の運動場に響くかけ声
平和ですねぇ」


運動着を着たて紅白帽を付けた殺せんせーが生徒達を見ながら言う。


「……生徒の武器が無ければですが」


そう、生徒達はナイフをもって素振りをしていた。


「八方向からナイフを正しく触れるように!!
どんな体勢でもバランスを崩さない!!」


烏間は厳しい声で生徒達に指導する。


「この時間はどっか行ってろと言ったろう
体育の時間は今日から俺の受け持ちだ

おまえが体操着 着てどーする

追い払っても無駄だろうがな
せいぜいそこの砂場で遊んでろ」


そう言って烏間は近くにあった砂場を指差す。


(……それにしても、あの中谷という生徒…一見からすると運動神経が高くないように見えるが、基礎はしっかりしている…
もしかして、手を抜いているのか…?)


……な、なんだか、烏間先生が私を睨んでいる気がします……。

もしかして、私のことが嫌いなのでしょうか……まだ、一言も喋ったことないのに…。

(トホホ……)


烏間の考えに気付いていないアーニャはそんな事を考え1人、頭を垂れるのだった。


「ひどいですよ烏間さ…烏間先生
私の体育は生徒に評判良かったのに」

「うそつけよ殺せんせー
身体能力が違いすぎんだよ、この前もさぁ…」


泣きながら砂をいじる殺せんせーに、前原君が言う。

そりゃそうです、だって殺せんせーの体育の授業は────……


......................................................


「反復横跳びをやってみましょう
まず先生が見本を見せます」

そう言って殺せんせーは目の前に引かれた3本の白い線を見る。

……!?

え、えぇ!?!?

驚くのも無理はないです。驚くのが当たり前なんです。

だって、殺せんせーが1体から3体に増えたんだもん……。


「ますは基本の視覚分身から
慣れてきたらあやとりも混ぜましょう」

「「「できるか!!」」」


みんな、目玉が飛び出そうなほど目を見開いて……そりゃそうだよね。

こんなの、異次元すぎて…人間にはとてもじゃないけど、いや、とても無理です。



......................................................


……────そんなことが過去にありました。


「異次元すぎてね〜……」

「体育は人間の先生に教わりたいわ」


あ……殺せんせーかすごくショックを受けてる…。


(何だか憎めないなぁ…この先生…)


憎めないと言いますか、丸いフォルムとかは、可愛らしいと思います。

私の趣味が悪いのか、この事は誰にも言っていないけど……。


「…やっと暗殺対象を追っ払えた
授業を続けるぞ」

「でも烏間先生、こんな訓練意味あるんスか?
しかも当の暗殺対象がいる前でさ」

「勉強も暗殺も同じ事だ
基礎は身につけるほど役に立つ」

「……?」


隣にいる渚君は、よく分からないといった表情で烏間先生を見る。

私も、実際にはよく分からないけど…。


「例えば…そうだな
磯貝君、前原君、そのナイフを俺に当ててみろ」

「え…いいんですか?2人がかりで?」

「対先生ナイフなら俺達人間に怪我は無い
かすりでもすれば今日の授業は終わりでいい」


そう言った烏間先生はネクタイを少し緩める。


「……な、なんか…様になるなぁ……」

「え?アーニャちゃん、なんか言った?」

「え!?う、ううん!何でもない!
独り言って言うか、独り言だから!」


私はよく分からない言い訳をしつつ、両手をブンブン振り回しながら渚君の気をそらそうと磯貝君達の方を見た。

渚君もまたそっちに視線を向けてくれて、なんとかやり過ごせた。

まあ、好きとかそう言うのじゃなくて、大人の男性って言うの?そういう感じはするよね……?


「え…えーと…そんじゃ」


磯貝君はそう言うとヒュッと烏間先生にナイフを当てようとすると、烏間先生はいとも容易く華麗に避けてしまった。


「……!!」

「さあ」

「くっ」


今度は前原君も当てようとするけど、受け流されちゃった…。

2人とも、別に動きか遅いわけじゃないんだけどなぁ……。


「このように多少の心構えがあれば
素人2人のナイフ位は俺でも捌ける」


「すごい……」


隣で渚君が呟いた。

本当に、すごい。私もあんな風に華麗避けてみたいな…。

私は自分の手を見つめる。


「くッそ」


磯貝君と前原君の声でまた現実に引き戻される。

見ると、2人は烏間先生に腕を掴まれ、そのまま地面に倒れた。


「俺に当たらないようでは
マッハ20の奴に当たる確率の低さがわかるだろう

見ろ!今の攻防の間に奴は」


私達は烏間先生が指差した方向を見る。


「砂場に大阪城を造った上に着替えて茶まで立てている」


(((腹立つわぁ〜…)))


「クラス全員が俺に当てられる位になれば
少なくとも暗殺の成功率は格段に上がる

ナイフや狙撃、暗殺に必要な基礎の数々
体育の授業で俺から教えさせてもらう!」


烏間先生は磯貝君と前原君の腕を掴んで立たせながら言った。

それと同時にチャイムも鳴る。


「それと、中谷
お前は少しだけ残れ、話がある」

「おっ、中谷〜お呼び出しだぞ〜
お前もしかして何か悪いことでもしたのか?」


杉野君がイタズラをした子供みたいな笑顔で私を見てくる。


「そ、そんな事はないと思う…けど…」

「じゃあアーニャ、私は先に教室戻ってるね!」

「うん、ごめんね」

「こんな時にも謝んないでよ〜」


カエデちゃんは私の背中を軽く叩いて歩いて行った。
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