暗殺少女

□第5話
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「おはようございます」


今日も、いつもの調子で殺せんせーが教室に入って来た。

だけど、私たちは気まずく下を向いたり、顔を見合わせたりしている。

だって……


「…ん?どうしましたか皆さん?」


私が教卓の方を見ると、殺せんせーもそれに気づいたのかそっちに目を向けた。

その上には、ナイフで刺されたタコが置いてあった。


「あっごっめーん
殺せんせーと間違えて殺しちゃったぁ
捨てとくから持ってきてよ」


こんな事をした現況、カルマ君が楽しそうに言う。

……昨日面白い事思いついたって言ってたけど…きっと、この事だよね…。


「…………わかりました」


殺せんせーは教卓からタコを引き抜いた。

そして、そのままタコを持ってカルマ君の席へ向かう。

しかし、その瞬間殺せんせーは触手をドリルのように回転させた。

……というか、ドリルの先端を付けてるのか、はたまた触手そのものがドリルなのかわからないです。
早すぎてわからないです……。

一瞬にしてどこかへ行って戻ってきた殺せんせーは、両手で紙袋やミサイルを抱えていた。


「見せてあげましょうカルマ君
このドリル触手の威力と、自衛隊から奪っておいたミサイルの火力を……」


せ、先生…自衛隊から奪ったって……
それ、教師としてどうなんでしょうか…盗みですよ、盗人ですよ……。

けれど、きっと月を破壊したこの先生の前では、ミサイルを盗むことくらいちっぽけに思えてきた…。

殺せんせーは、高速で何かを作り始めた。


「先生は暗殺者を決して無事では帰さない」


目を光らせて言った先生は、次の瞬間、カルマ君口にたこ焼きを放り込んでいた。


「あッつ!!」


カルマ君は熱すぎてたこ焼き出しちゃったけど……。

(すっごくいい匂いだし、美味しそう…)

私は、少しだけ食べてみたい気持ちになった。


「その顔色では朝食を食べていないでしょう」

「マッハでタコヤキを作りました
これを食べれば健康優良児に近付けますね」

「……」

「先生はねカルマ君、手入れをするのです
錆びて鈍った暗殺者の刃を

今日1日本気で殺しに来るがいい
その度に先生は君を手入れする」


……初めて…こんな警戒する先生を見たの…。


「放課後までに君の心と身体をピカピカに磨いてあげよう」



殺せんせーは目を光らせて言った。


「カルマ君…大丈夫かな……」

「ね、アーニャ…」

「?」

「アーニャってさ、彼とどういう関係なの?」

「え!?」


小声で聞いてきたカエデちゃんに、私は思わず声を出してしまった。

けど、周りの皆は殺せんせーとカルマ君のやり取りを見ていて、気付いていないみたいだったから良かったけど…。

彼って言うのは、恐らくカルマ君のことだろう。


「ど、どうって…普通っていうか……」

「だって、戻ってきた時アーニャの頭撫でてたじゃない?
ああいうのって、相当な仲じゃないと出来なくない?」


ましてやこんな思春期にとカエデちゃんはニヤニヤ顔で言った。


「で、でも…別にカルマ君は何とも思ってないと思うよ?」

「どうして?」

「だって、前皆に言われたし…「アーニャは妹みたいだよね」って…」



そう、私は以前、クラスの人達にそんなようなことを言われた。

背が低め(カエデちゃんとは僅差で私の方が高いけど…)で、いつも自信なさげにヘコヘコしている私は、なんだか見ていて危なっかしいというか、守ってあげたくなる存在らしい。

どちらかというと私は、守られるよりも守ってあげたいんだけど……。


「うーん、そうかなぁ」

「カエデちゃん……?」


カエデちゃんは納得がいかないように首を捻るけど、すぐに笑顔になった。


「アーニャが言うならそうなんだね!
でも、いつでも何でも相談してね!」

「……?」


カエデちゃんの言葉の意味がよくわからないけど、そのままの意味で受け取っておこうと思い、私はありがとうと返した。

だけど、なんでカエデちゃんはそんな事聞いたんだろう…。



(うーん。アーニャは絶対好きだと思うんだけど……
もしかして、気づいてないとか?
……多分そうだよね、アーニャだもんね…)


カエデは1人、ため息をつくのだった。
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