暗殺少女

□第17話
1ページ/3ページ




「ここなら騒いでも誰も来ねぇな」


私は廃墟のような場所に連れられていた。

ソファーやバーカウンターがあるので、ビル等の場所では無い事は確かだ。


「遊ぶんならギャラリーが多い方が良いだろ
ちゃーんと記念撮影の準備もな
楽しもうぜ…台無しをよ」


そう言って男達はバーカウンターの方へ行った。

なんとかして、この危機を脱しなければ…。
少しでも脱出の糸口があるれば…。

先ほどよりも震えが収まってきた。

…大丈夫、私なら大丈夫。きっとできる。

せめて、せめてこの2人だけでも助けられればあとはどうだっていい。
この2人の無事が最優先だ。

だけど、私がこの2人を助ける時はきっと、私の秘密もバレてしまうことになる。

…怖い。

皆に避けられるかもしれない、軽蔑されるかもしれない。

皆が────いなくなってしまうかもしれない。

それが怖い。

私は、後一歩を踏み出せずにいた。


「…神崎さん、そういえばちょっと意外
さっきの写真、真面目な神崎さんもああいう時期あったんだね」

「…うん」


カエデちゃんの言葉に有希子ちゃんが頷き、少し俯いて話し始めた。


「うちは父親が厳しくてね、良い学歴良い職業良い肩書ばかり求めてくるの
そんな肩書生活から離れたくて名門の制服も脱ぎたくて
知ってる人がいない場所で格好も変えて遊んでたの

…バカだよね、遊んだ結果得た肩書は「エンドのE組」…もう自分の居場所がわからないよ」

「…そんなこと、ないよ」

「…え?」


気づいたら口に出していた。

こういう時、自分の言葉を伝えるのだって勇気が必要だ。

これが、私の一歩…小さくても、少しずつでもいい。

先生達は待っててくれるって言っていた。

だから、少しずつでもいいから自分から前に進むんだ。

自分を変えられるのは、自分しかいないのだから。

私は小さく息を吸い込んだ。


「有希子ちゃんは、居場所がわからないって言ったけど、居場所ならあるよ

私がいる。私達がいる。E組の皆がいる。

有希子ちゃんはきっと、一人でずっと辛かったんだよね…これからは、辛い時は辛いって言って、私が全部聞くから、だから…居場所がわからないなんてそんな悲しいこと言わないで…?」

「っ…アーニャちゃん…ありがとう
本当はね、E組である事に少しだけ後ろめたさを感じていたの…
だけど、私には皆がいる…」


有希子ちゃんはそう言うと、晴れ晴れとした笑顔でもう一度私にお礼の言葉を言った。

その光景を見ていたカエデは、アーニャが少しずつでも前向きになろうとしているのだと思い、自然と笑顔になっていた。


「いい話してるとこ悪いんだけどよ〜」


リーダーが目の前に来てしゃがんだ。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ