暗殺少女

□第4話
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私は烏間先生と殺せんせーの元に向かった。


「……烏間先生、話って何でしょうか…?」

「なぜ、本気を出さない?」

「え?」

「おや、奇遇ですねぇ烏間先生?
中谷さん、それは私もあなたの日常生活を観察する上で日々感じていました」


私は驚いて思わず烏間先生と殺せんせーを交互に見た。


「ほ、本気?本気って何のことでしょうか…?」

「しらばっくれても無駄だぞ

生徒達には気づかれていないが、その道の俺達にならお前が一生懸命やっているように見せて本気を出していないのは一目瞭然だ

まあ、確信はなかったがな」

「……」

「中谷さん?……!」


突然俯いて言葉を発さなくなったアーニャに、殺せんせーは屈んで表情を覗き見ようとした。

が、アーニャの目が一瞬金色に、そしてまるで人間ではないその無機質な目に驚く。

しかし、それは本当に一瞬で、次の瞬間にはもう、いつものキレイな透き通った青緑色に戻っていた。


(今のはいったい……)


「……ごめんなさい、ちゃんと…ちゃんと全部話します…
だけど…今は、もう少しの間は、内緒にさせてください……」

「……」


力強く手を握りしめたアーニャを見て、烏間は何かを察する。


「……それはいいが、お前はE組の生徒だ
こいつを殺さなくてはいけない事はわかっているな?」

「はい」

「その為には、今のままではこちら側としても困る
これは、生徒としての話ではなく、暗殺者としての話だ」

「……はい」

「まあまあ、烏間先生」


さらに縮こまる私を庇うかのように、殺せんせーは私の肩に手を置いて話す。


「今は、彼女の判断に任せましょう
中谷さんはとても心優しい生徒です
きっと、何か事情があるのでしょう」


殺せんせーはそう言って私の顔を覗き込んで言った。


「だけど、私は君の担任です
いつでも頼ってください、いつでも話してください
私は大歓迎です!それが、担任の務めでもありますからね」

「!!」

「……ハァ」



そんな事を言ってくれて、思わず私は顔を上げて殺せんせーを見る。


「わかった。だが、俺の授業で手を抜くのはけしからんな…これはあくまでも教師としての言い分だが……」

「烏間先生……」



ああ、なんて優しいのだろう。

こんな私でも、とても親切にしてくれる。

大丈夫、きっと話せる。

この人達になら、みんなになら、きっと話せる。

だけど、もう少しだけ私に時間をください。

話す覚悟を決める時間をください。


「烏間先生、殺せんせー…ありがとうございます
それと……ごめんなさい

だけど、きっと話します。絶対に話します。

いつになるかは分からないけど、私の心が決意出来たら、ちゃんと全部話します」


「……そうか」

「待ってますよ」


そう言うと殺せんせーは歩いている生徒達の方へ私の体を向けて言った。

長い時間話していたように思えたけど、全く時間は経っていなかったらしい。


「さあ、みんなのところに戻ってください」

「はい」


私は駆け出した。

それに気づいた渚君が手を上げる。
隣には、杉野君もいた。

「何の話をしていたの?」

「秘密!」

「そっか…でもアーニャちゃん、なんか変わった?ね?」

「え?そ、そうかな……」

「お、それ俺も言おうと思ってたんだよな
なんつーか、さっきよりも明るくなったって感じだな」


渚君と杉野君に言われて、私は自分の顔を触る。


「自分の顔触ってもわかんねーだろ」


杉野君は苦笑いする。


(本当に皆やさしいなぁ
きっと、本校舎の人達だったら、こんな人達一人もいないんだろうな…)

私はE組の皆が大好きなんだと、改めて実感した。


「それはそうと、6時間目少テストかー」

「体育で終わって欲しかったよね」

「ね、ねぇ!渚君、杉野君……」

「!」


2人を呼び止めたが、渚君は私ではない方向を見て驚いていた。

私もそっちを見る。


「……!!
カ、カルマ君……」


そこには、停学していたはずのカルマ君がいちご煮オレをもって立っていた。


「帰って来たんだ」


渚君も少しだけ驚いているみたいだった。


「よー渚君、アーニャ2人とも久しぶり」


カルマ君は笑顔で応えた。
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