深夜の酒宴 [文スト]

□其ノ弍拾肆
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……そうなのか。

太宰さんからの情報は昔一緒に仕事をした事があるポートマフィアの幹部で、重力を操る異能を持ち、ポートマフィアでも体術の腕は一番の人間であるため接触には要注意……だったが

どうやら幾つか語弊がある様だ。

どう見ても、この明らかな嫌悪感は太宰さんに何度か痛い目を見せられた顔だ。つまり、一緒に仕事をしたレベルの仲じゃない。

で、どう考えても仲はあまり良くない。つまり、仲は良くないが何度か一緒に仕事をしている…一種の相棒的関係だったんだろう。仲の悪さが関係無くなるほど、二人を組ませるのが脅威だという事だ。

「おい、何人の顔見ながら固まってんだ!」

不機嫌そうな顔のまま、目の前の中原さんが怒鳴った。私は慌てて弁解する。

「いや!えっと…急に親近感が湧いたな、と思って……。
太宰さんに苦労させられてるんだなと」

苦笑しながら、太宰さんの罠にかかった今までの自分を思い返す。
何と云うか……自分が可哀想になってくるな。毎度痛い目を見せられてるが、国木田さんなんてもっと悲惨だ。

あの人は絡むと本当ろくな事が無い。

「ハッ、そっちも苦労してるらしいな、探偵社。」

鼻で笑いながらも少し表情が緩む中原さん。そんな姿に私も少し緊張感が抜けた。

「全くもってその通りです。実力は確かですが、社員の一人に至っては、太宰さんが近づくだけで体調不良を訴える様になってます。」

云わずと知れた国木田さんの事だ。

ボヤく様に云うと、少しだけ中原さんが同情と呆れが入り交じった表情で引き攣った笑みを浮かべる。

「そ、そりゃ大変だな」

「はい」

私は困った表情のまま笑みで返した。お互い最低限の警戒はしているものの、場の雰囲気は穏やかだった。

さて、そろそろ港の方に行かないと大事な結末を見逃してしまう。

「では、そろそろ失礼します。中原さん、本当にありがとうございました。」

私はもう一度頭を下げた。中原さんは口角を少し上げて

「…その中原さんっての気持ち悪ぃから止めろ。名前で善い。」

そう云う中原さんに少し驚きながらも、笑い返した。

「……はい、判りました。では中也さんで」

そう答えた私に、中也さんはニッと悪戯っぽい笑みを浮かべる。

「んで、手前は?」

「椎名 麟です。次会う時が敵として、でないことを祈ります。」

私は心底心を込めて云った。中也さんの異能は脅威だし、探偵社を壊滅させるだけの力も持っている。

願わくは敵として相見える事が無いよう……

「ハッ、そりゃ無理じゃねェか?」

嘲笑を浮かべた中也さんが私の願いを一言で打ち砕いた。

それは違いないだろう。私は探偵社にいて、彼はポートマフィアに居るのだから。

私は同意はせずに、ニコッと笑みで返してその場を立ち去った。同意して実際にそうなるのは厭だっという意外と子供っぽい理由で。


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