深夜の酒宴 [文スト]
□其ノ弍
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給湯室でお湯を沸かしていると、扉の向こうで敦くんと国木田さんが会話しているのがうっすらと聞こえてくる。
「紅茶……ですか?」
「嗚呼、麟の紅茶は軽くプロレベルだ。アルバイトの賜物だと云っていたな」
「へぇぇ……」
沸騰したお湯を高い位置から注ぎ込んで、数分間蒸らす。一番良い状態で乱歩さんと国木田さん、与謝野さんと何時も飲むメンバーのとこに持って行った。
「ありがと〜」
「どうも」
「お、サンキュ」
これだけでも久しぶりの感覚で一寸嬉しくなった。皆が飲んで居るのを笑って見ながら
「他の方も宜しければお淹れしましょうか?」
と他の人達にも訊いておく。
「是非お願いしたいな〜。可憐な少女の淹れるお茶……何と甘美な響きだろうか!!」
よく分からないオーバーリアクションを取って迫って来た死神さん。驚いて一瞬後に引くが、慣れた態度でスっと流す。
色んな意味で関わっちゃいけない人種だ……
「判りました。えっと…太宰さんと……」
「あ、すみません僕もお願いします。」
「僕も」
ひぃふぅみぃと数えて居たが、敦くんから始まって結局全員分必要な様だ。まあ、親睦深める為だとでも思っとこう。
「私にもお願いしよう。」
そう言って春野崎さんと福沢さんがドアを開けて事務室に入ってきた。久しぶりの再会。ぎゅっと抱き寄っていきたいのをグッと堪えて笑いかける。
「福沢さ…ゴホッ……社長。お久しぶりです。」
私はきちんと丁寧に挨拶した。
「嗚呼、前よりかは大人しく良い娘になったな」
「一体何時の話ですか。」
そう云って笑った。笑う私に対して、相変わらず福沢さんは仏頂面だがそれはいつもの事だ。特に気にはならない。
「え…?えぇ?」
後ろではてなマークを浮かべる敦くんに笑いかける。私は手で指し示しながら説明する。
「昔、行き場の無くなった私を拾ってくれたのが福沢さん。だから…私の養父……って事になるんですかね?」
そう言いながら更に悪戯っぽく笑うと、新しく入ってきた組が少し目を丸くした様に見えた。
新人達(主に約一名)に驚かされてばっかりなのだから、少し位は驚いて貰わないと、ね。
私はご機嫌で福沢さん用の紅茶を淹れに、給湯室に戻っていった。