深夜の酒宴 [文スト]
□其ノ参
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目が霞む……息が出来ない。痛いのかすら判らない……
それでも地面にうつ伏せで倒れているのは判る。残念な事に全く身動きが取れない。
暗くなる視界の中で芥川の声が聞こえる。
「元より僕らの目的は貴様1人なのだ、人虎。そこに転がるお仲間は、いわば貴様の巻き添え。」
……人虎……?あぁ……敦くんの事だ。
…巻き添え?……私達の事を言いたいのか…?
「僕のせいで…みんなが……?」
あぁ……違う……違うんだよ、敦くん。私が最初に能力で皆を避難させれば良かったんだ。能力を皆に知られたくないからって…隠してたんだから自業自得だ。
被害を拡大させた要因は私だ。太宰さんも、感情的にならずにすぐに助けてくれと云っていたら…
走馬灯の様に後悔が浮かんで消えていった。
「然り、それが貴様の業だ人虎。貴様は、生きているだけで周囲の人間を損なうのだ。」
敦くんの事情は聞いている。私のせいなのに……益々、こんな風に言わせて置きたくない。
必死に重い口を開く。
「……ち……がう……よ。」
私の声は自分でもびっくりするほど掠れていた。掠れた小さな声は誰にも届かない。きっと、今の声じゃ地を歩く蟻にすら届いちゃいなかっただろう。
「僕の『羅生門』は悪食。凡ゆるものを喰らう。抵抗するならば次は足だ。」
そう言いながら外套の姿を変化させる芥川。狭まる視界で必死に状況を見ようとする。
「や……」
止めて!
言葉は続かず、スーッと血の気が無くなったせいで意識が飛ぶ。次に目が覚めたのは探偵社の医務室のベッドだった。