深夜の酒宴 [文スト]
□其ノ玖
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書類をファイルに戻していると
「手伝う」
そう一言云って鏡花ちゃんが書類を集めてくれた。
「ありがとね、助かるよ」
鏡花ちゃんにそう云って笑いかけると、表情はあまり変わらないが少し雰囲気が明るくなった気がした。
うーん、折角なんだから……
「鏡花ちゃん、丁度良いから一寸手伝って貰えるかな?」
少し閃いた私は鏡花ちゃんに手伝いを頼んだ。
鏡花ちゃんは何も云わずにコクリと頷いてついて来る。
やっぱり可愛いなぁ
ニコニコしながら鏡花ちゃんの前で紅茶を淹れた。
「これを取り敢えず全員に配ってもらえるかな?」
カップに注いだ紅茶をお盆に乗せて、鏡花ちゃんに渡した。
社長だったらきっと顔色を変えずに内心大喜びだろう。
我ながらグッドアイデア!
社員達との顔合わせ+鏡花ちゃんには暗殺以外の初のお仕事+探偵社員へ癒しの提供
正に相互利益!私偉い!!
心の中で小躍りしながら、鏡花ちゃんがお茶を運ぶ姿を後ろからこっそり見つめる。
「……どうぞ」
鏡花ちゃんがスっとお茶を社長の机に置く。社長は難しい顔で腕組みをして座っていたが、だいぶ間をあけてから
「…………ああ。」
と一言返事をした。
うーん、もうちょい面白いことになるかと思ってたんだけど……
先程、鏡花ちゃんを採用した時の社長の顔を思い出し、私の中でちょっとした悪戯心が湧いた。
私は大きめのノートを持ってきてサラサラッと文字を書き、社長の前でお盆を抱えて立っている鏡花ちゃんに見えるように掲げて見せた。
鏡花ちゃんは少し首を傾げて不思議そうな顔をしていたが、指示通り社長に向き直る。
社長がお茶に手をつけた瞬間、鏡花ちゃんはお盆に半分顔を隠す様に抱えて
「美味しい?お爺ちゃん」
と上目遣いに訊いた。
「ゴホッ!」
社長は噎せたらしく1回大きく咳き込む。
「ブッ」
私はそれを扉の影で見つめながら噴き出した。鏡花ちゃんの可愛い顔でお爺ちゃんはキツい。
私は声も出ずにひたすら笑っていた。
社長がそれに気づいて静かに一言。
「……麟」
あ、拙いバレた
逃れられないか考えていたが、諦めて社長の前に行く。
鏡花ちゃんには下がってもらった後、社長の前に立つ。
「下らない事で遊ぶな」
「はい……」
静かに怒られてしまいました。