深夜の酒宴 [文スト]

□其ノ拾
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探偵社に出社すると、いつの間に帰って来たのか太宰さんが既に出社していた。

「おはようございます」

私が自分の机に座りながら挨拶すると、国木田さんと太宰さんがそれぞれ挨拶を返してくれた。

「無断欠勤が続いてましたけど、何処行ってたんですか?」

私が太宰さんにパソコンから目をそらさずに訊くと、

「厭ぁ、一寸(ちょっと)マフィアに捕まっててねぇ。昨日やっと逃げ出してきたんだよ。」

そう云って胡散臭く笑う。

自殺して何処かに流されたって訳じゃ無かったのか…

私はパソコンからやっと顔を上げて太宰をジト目で見つめた。

「…どうせ態と捕まってたのでは?それと、本当に昨日脱出したんですか?」

私が怪しいという気持ちを全力で込めて訊く。

「麟ちゃんは毎回私への中りがキツいねぇ…。

流石に警備が厳重でね。脱出に思ったより時間がかかって…結構苦労したんだよ〜?」

相変わらずヘラヘラと笑いながら云う太宰さん。

別に、太宰さんに対して特別中りが強いわけじゃない……と思ってる。
過去の事は取り敢えず最初以来言及して無いし、別に太宰さんの過去を云いふらしても無いし……

しかしまぁ、そう云われてみればそうかもしれない。
マフィアで捕まってと云うのなら時間も掛かるだろう…

……胡散臭いのには変わらないけど。

少し納得いかない部分もあるがそういうことにしておこう。

「そうですか」

私はそれだけ返して仕事に戻った。


そこから暫くして敦くんと鏡花ちゃんが二人揃って出社してきた。

「あ、おはよう」

私が挨拶すると何か焦ってるのか大きな声で応える敦くん。

「おはようございます!…ってそんな事より太宰さん!!

同棲なんて聞いてませんよ!!」

ゼイゼイと肩で息をしながら、一気にまくし立てる敦くん。

……?

同棲……?

「部屋が空いてなくてね。
それに、新入り二人には家賃折半が財布には優しい。」

あ…鏡花ちゃんと……

確かに社員寮の部屋は既に無い。

大体、有るならとっくに私が寮に戻ってる。私の部屋だった場所は現在、不本意だが太宰さんの部屋になってしまったし……残った一室は敦くんが住んでいるし……。


……改めて考えると私、なんだか太宰さんに追い出されたみたいじゃないか。


ジト目で太宰さんを睨みつける。

別に今更恨んじゃいない……筈だけどなんか気に食わ無かった。

敦くんなら文句は云わないが、この迷惑噴霧器に関しては別だ。

何故か一々癪に障るなぁ……

別にもう恨みたくないし、……仲良くしたくない訳じゃ無いんだけどなぁ……
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