深夜の酒宴 [文スト]

□其ノ拾
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探偵社一一

「おい!朝刊を見たか!」

国木田が事務室に駆け込んできた。

報道(ニュース)でもやってるよ。」

『事件現場です!ご覧下さい

七階建ての建物が一夜にして消滅してしまいました!

一部情報筋では消滅した建物はポートマフィアのフロント企業が入っており、構成員の事務所として使われて居たとの情報もあります。

市警では敵対組織による襲撃の可能性もあると見て軍警に協力を要請しつつ一一』

「『メッセージ』とは此れか」

国木田が悔しげな様子で朝刊を握りしめて云う。

「マンションのオーナーに確認しましたが、やはり、先日から椎名さんも部屋に帰って居ないようです。」

谷崎が少し焦った様子で伝える。

「逆らう探偵社も用済みのマフィアも凡て消す か。」

太宰は何か思案する様にポソッと呟いた。

「谷崎! これ以上単独で動くな
敦と組んで麟を探せ!太宰は俺と会議室に来い!
社長会議だ

敵と接触しても戦わずに逃げろ!」

国木田の声には必死さが詰まっていた。どれだけ探偵社の状況が良くないかが計り知れた。


ピリピリとした雰囲気の中社長会議が開かれる。出席者は社長、国木田、太宰、江戸川、与謝野の五名。
探偵社内でも主戦力の人員だ。

「麟の足取りは追えそうか?」

社長が重い口を開く。

「現在谷崎と敦が追っています。麟は発信器を装備して居たようですが、残念ながら現在居場所不明です。」

国木田が眼鏡を押さえながら報告した。それに補足する様に太宰が続ける。

「昨日一度、時間停止がありました。恐らくその時に敵の手に落ちたとみられます。」

「組合の中に空間関係の異能力者が居るみたいだね。
太宰の云う時間停止が彼等が帰ってすぐの事だったらしいから、あの中の一人がその空間関係の異能力者だ。

今もその中に居るから、そいつを探してその空間から出さなきゃいけないね。」

棒付き飴を口の中で転がしながら乱歩が続けた。

「うむ。
此処から組合はどう動く?」

「探偵社に更に圧力を掛けてくる事は必定でしょう。ポートマフィアも黙っちゃいない。
三組織での抗争は避けられないかと。」

「そうか」

太宰が社長の言葉に応える。奥で国木田がぐっと歯を食いしばった。

「まさか、麟の奴判って捕まったんじゃ無いだろうねェ」

与謝野が頬杖をつきながら溜め息混じりに呟いた。

「どう云う意味ですか?」

国木田が訊くと

「いや、今一寸思ったんだけどねェ。麟の場合、ビビリのくせに変な所で首突っ込む癖があるから…」

「……事務員達を避難させておくことも考える必要がありそうだな。」

社長が頭を抱える。
此処に麟を呼んだばかりの頃にも何度か似たような体験をしているため、乱歩や社長も与謝野の意見に納得するしかなかった。


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